第一世界:フッブート王国
かつてイル・メグにあったとされ、ドラン族(アウラ族)とガルジェント族(ルガディン族)の融和をきっかけとして建国された後、少なくとも300年の歴史があったという。今もイル・メグにはその痕跡が多く残っていて、リェー・ギア城もフッブート王国時代のもので、かつては翠光の城グリュネスリヒト城と呼ばれていた。
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フッブート王国最後の国王であるロールドリック王の時代、その娘で第一王女である姉のソールディア姫が「三種の国宝」を継承し、王位継承者(王太子)と決定したことで、第二王女ポールディア姫には他国への政略結婚の話が持ち上がった。政略結婚などしたくないポールディア姫は宮廷魔導師のタドリクに相談し、タドリクの尽力により撤回となりポールディア姫は条件付きでフッブート王国に残ることができた。その条件とはポールディアが第二王女としての身分を捨て、宮廷魔道士となることを求めたという。魔法が苦手である彼女は宮廷魔導師になれないと王宮から追放されてしまう。彼女は以前から親しくしていたン・モゥ族の若者ベーク・ラグに「人の中に眠る才能を開花させる秘術」を教えるよう頼み込んだ。だがこれは未完成な術であることを理由に断り続けたが、「宮廷魔道士になれなければ、姉を支えることも、あなたとこうして、おしゃべりすることすらできなくなる。家族といっしょに暮らしていたい」と泣き落され、ついに彼からを伝授される。それを知った宮廷魔導師のタドリクは王国の実権を握ろうと画策し、第ニ王女を幽閉、第一王女を魔物化する計画をたてた。彼はポールディアに姉を殺害することで王位継承者となれると甘言を弄し、抱き込んだ。
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程なくして王国では、民が魔物化して人を襲うという事件が起こり始める。ベーク・ラグはポールディアに教えた秘術が魂の在り方そのものを改変し、人を魔物の如き異形へと堕とすことも可能だと知っていたため心中穏やかではなかった。この事件には王国騎士団に加えて宮廷魔道士たちにも捜査に加わることとなり、その陣頭指揮には
ソールディア姫があたることとなる。操作が難航する中、第二王女ポールディアの体にも異変が起こり始め、この事で彼女の事件への関与が明らかになりポールディアは地下牢に閉じ込められてしまう。同時に魔物化事件の黒幕がタドリクであることが判明するが、捜査を指揮していた第一王女宮ソールディアも廷魔道士タドリクの手により魔物化が始まり自ら命を絶ってしまう。次代の王を喪ったフッブート王国は、光の氾濫後に当地を襲った罪喰いの群れに対抗しきれず、やがて国を棄てることになった。
独房の壁には血文字でこう書き残されていたという。
「王位継承権に目が眩み、あの男の話に乗ったのが間違いであった。よもや、この私が捨て駒のように利用されるだけなどと……。嗚呼、せめて姉も同じ末路を辿らんことを!」
グリュネスリヒト城が放棄される際、ひとりの王国騎士がかつての第二王女を憐れみ、独房の鍵を開けたという逸話が伝わる。