海洋都市ニーム
魔法文明が花開いた第五星暦にアルデナード小大陸の南西に浮かぶバイルブランド島に存在した海洋都市ニームは、古代十二都市においては人口も規模も軍事力も小さく、航海術を駆使した交易により生計を立てる小国であったという。
一方で荒々しい海の民という一面も持ち合わしており、都市の防衛を担う「ニーム海兵団」は猛者として世界中に知れ渡る存在であった。魔法の素養がある者が少なく、その数少ない魔道士たちに先頭における治癒と支援に特化した「軍学魔法」を習得させ、斧を主体とした海兵の指揮にあたらせるという独自の編成スタイルを確立し、魔大戦が勃発してからも他国の侵略やマハが送り込んできた妖異を退け、生き残ってきた。
300年の長きに渡って続いた魔大戦の末期、一隻の交易船が病を持ち帰ったことで、国中に爆発的感染を巻き起こし、次々と人々が奇病に感染していった。この病にかかると、髪は抜け落ち、鼻や耳が壊死して削げ落ちてしまい、四肢も縮み化け物のような姿になってしまうという。これが現在、「トンベリ」として知られる存在である。
国は何とかこの奇病を押さえ込もうと、治療方法の確立に全力を注いだが感染はいつまでも止むことはなかった。予防しか打つ手がなく、やまれず人々は感染の拡大を防ぐため、トンベリと化した患者たちを、当時隔離施設として利用されていたワンダラーパレスに隔離監禁したうえで、湖に水を引きこんで「ブロンズレイク」に沈めたうえ、封印魔法で神殿ごと封じるという策をとった。
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これにより、トンベリたちは迫害と裏切りの「怨み」を晴らすことなく抱えたまま、1500年に渡り、封印されることとなったのである。
時を同じくして、世界中では第六霊災の危機が叫ばれた。環境エーテルの測定により「水の霊災」であることが古都アムダプールからアナウンスされ、水に囲まれた海洋都市であるニームは悲壮な空気に包まれた。そんな中ニームはトンベリ病による人口減少の被害を受けながらも「黒渦団」を設立、洋上に船を並べて巨大魔法陣を描き、魔法の大渦を創り出すことで大津波を消滅させる「メールシュトローム作戦」を敢行する。魔法の渦を発生させ大津波を消滅させること自体は成功するが、余波を受けた沿岸の都市部は壊滅した。住むべき場所をなくした人々はワンダーパレスでの一件も相まって、ニームを見限ってバイルブランド島を去ってしまったという。これが元でニームは衰退、滅亡することになる。