七彩溝(逢瀬の大柳:創)
ヤンサ北東部に位置する幻想的な風景の場所。北西側から赤、橙、黄、緑、青へと七色に変化した水をたたえている。不思議な色彩は、むかし天女がかけた虹の橋の破片が混じったせいだという。
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七彩溝と逢瀬の大柳
あるとき、ヤンサに舞い降りた天女はいたずらな風に羽衣を攫われ、谷合にある泉へと羽衣を探してやってきたといいます。そこで狩りを終え馬を休ませながら汗を流していたドマの若殿に羽衣を拾われたことで二人は出会うこととなってしまいます。若殿に一目で恋をしてしまった天女。若殿も世にも美しい天女に一目で恋におち、二人はこの谷合の大きな柳の下で人目を憚って逢瀬を重ねたそうです。
天に住む天女、家督を継がねばならない若殿。成就することのない関係に想いを募らせた天女は、いけない事とは知りながら愛しい人を天上に連れ去ってしまおうと考え、空へと続く虹の橋をかけました。一方、天女と気持ちを同じくする若殿は天女の気持ちに胸打たれ、家を捨てる覚悟を決めてその虹の橋を急ぎ足で駆け昇っていきました。ところが天上に住まう神々がこれに気付き、下界に棲まう者を無断で天上に招いたことを激怒します。怒った神々は天女を天から地上へと堕とし、若殿が登り切る前にその虹の橋を粉々に壊してしまいました。足場を失った若殿は真っ逆さまに落ちてゆき、いつも二人が逢瀬を重ねたあの柳の根元に落ちて死んでしまいました。砕けた虹の橋の破片は泉に落ちて水にとけてしまいました。それ以来、泉の色が時折七色に染まるようになったそうです。そして若殿を亡くしてしまった天女は深い悲しみに暮れ、逢瀬の柳の下で若殿の亡骸を抱いたまま自らの命を絶ったそうです。
この二人の悲しみと怒りという感情は樹齢を重ねた逢瀬の大柳に力を与えます。どうしてももう一度だけ逢いたい人がいるときは、その大柳の麓で願掛けを続ければ、逢えなくなってしまった待ち人にもう一度だけ逢えるのだと言い伝えられています。何故もう一度かというと、願掛けをした人はその待ち人に魂を連れていかれてしまうからだそうです。