ハルドラスの石像
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雪で閉ざされたクルザス西部高地ファルコンネストの城壁から北を眺めると吹雪でもない限りその視界に巨大な石像が見える。この石像はイシュガルド建国の英雄、征竜将ハルドラスをかたどった巨大な石像だ。ハルドラスは豪胆将と呼ばれたトールダンを父に持つ「建国十二騎士」の一人である。
建国神話によれば、啓示された
約束の地へと民を導くトールダンの行く手を邪竜ニーズヘッグが阻み、そのニーズヘッグの攻撃を受けたトールダンは深い谷に落ちて死んでしまう。十二騎士団の一員として父に同行していたハルドラスは槍を取り、ニーズヘッグに果敢に挑み、その眼球をくり抜き撃退したとされている。だが、七大天竜フレースヴェルグが長寿が故に自身の経験から語った真実によれば、建国神話以前からイシュガルドは存在しておりドラゴン族と共に生きた時代が少なくとも300年はあったという。そんな中、ドラゴン族の力の源がその眼球にあると知った時の王トールダンは十二騎士と共謀し、人を信用して止まない七大天竜の一翼ラタトスクを謀殺し、その眼球を奪った。妹が謀殺されたその事実に激怒したニーズヘッグはトールダンと十二騎士に猛然と襲い掛かり、七日七晩に渡る激しい戦いの末、王は死に、十二騎士の半数ほどもまた、討ち死にしたというのが真実である。
更に建国神話では邪竜ニーズヘッグから眼球を奪い取ったハルドラスは「竜の眼」に触れ、己を失いかけるが、「正義の心」をもって打ち勝ち、その身に「竜の力」を宿した。これが「蒼の竜騎士」の始まりであると伝えられている。眼球から力を引き出し戦う術を編み出したハルドラスはニーズヘッグを撃退した後、父の皇位を継ぐことなくイシュガルドを立ち去ったとされているが、この逸話も真実ではない。
「正義の心をもって竜の力に打ち勝った」とされるハルドラスだが、実際は竜の力に呑みこまれており、それが表沙汰にならないように立ち去ったのが真実である。
ハルドラスが去った後に十二騎士を引退し酒場を開いたオルニカール・ド・コーディユロの娘であり竜騎士を目指していたベルトリーヌが、ある時竜の側で倒れていたハルドラスを発見し保護する。ベルトリーヌはハルドラスの胸甲と融合しつつある邪竜の眼が発する”声”を聞き、発見したのだという。邪竜ニーズヘッグの目をくり抜いて竜の力を得たハルドラスであったが、その目はなおも力を失うこと無くハルドラスの精神を蝕み、心を支配しようとしていた。邪竜の怨念により、間もなく「操られた傀儡」と化すだろうことを察したハルドラスは、ベルトリーヌに心臓を貫かせてその命を絶った。竜の力で「朽ちぬ死体」と化したそのハルドラスの遺体は隠密裏に教皇庁へと担ぎ込まれ、朽ちぬまま密かに保管されていたことは、我が身に蛮神を降ろした教皇トールダン7世が明らかにしている。
この事実を知らされることなく、初代「蒼の竜騎士」、征竜将ハルドラスを称えて造られた巨大石像がクルザス西部高地のそれである。女性彫刻家ペルセルが、晩年の30年余りを投じて造り上げた傑作であり、完成から150年以上が経過した今でも、これを上回る作品は造られていない。