スイの里
部族間の争いが絶えない故郷のアジムステップから争いを避けて紅玉海へと身を寄せたアウラ・レンの一族が、コウジン族から水中で安定した空気泡を創り出す術を学び、紅玉海の底に集落を築いたのがこの里だ。彼らは「紅玉姫(紫水の君)」と呼ばれる世襲制の指導者を立てて独立した社会を形成し、外界との交わりを最小限に保ちながらひっそりと暮らしている。現在も諸国との外交を断っており、唯一、碧甲羅の「碧のタマミズ」との交流がある。ドマの上忍であるユウギリは、このスイの里の生まれ。幼いころにドマで護国に燃える少年に出会い、のち里を出て忍者になったという。
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「紅玉姫」の御伽草子
紅玉海に伝わる昔話がある。
昔むかし、オノコロ島に若いヒューラン族の漁師の男が住んでいました。あるひオノコロ島の浜辺で碧甲羅のコウジン族が魔物に襲われているのを見かけて、男は迷うことなく駆け寄ると魔物を追い払い、碧甲羅を助けました。碧甲羅は男に大層感謝をし、男に「海中で息が出来る丸薬」を渡すと、男を連れて海の底を案内しました。
碧甲羅に案内されて、あちこち見聞するうちに、男は海に住む不思議な一族の宮殿でその一族のお姫様に目通りすることになりました。案内されたその先にはお姫様が横になり眠っていました。お姫様は男が思わず見とれてしまうほど大層美しい人でした。男と碧甲羅を案内した不思議な一族の男は「実は姫様はもう何年間も眠っていて、目を覚まさず民は困り果ているのです」と言いました。男がそんな事があるのかと驚いていると、隣でそれを聞いていた碧甲羅が「そういう事なら自分はお姫様を眠りから覚ます方法を知っている」と言い出すと、碧甲羅は手持ちの材料で先祖伝来の霊薬を作り始めました。出来上がった霊薬をお姫様に飲ませたところ、お姫様はぱちりと目を覚ました。不思議な一族の男は碧甲羅に何度も何度もお礼を言い、「あなたがこの方を助けたお陰で、こうして会う事が出来、姫様も目を覚ますことが出来ました。もしあなたがコウジン族の方を助けなければ姫様はあと何年眠っていたかもわかりません」と男にも何度も何度もお礼を言い、お姫様も是非もてなしたいからと数日ここに滞在して欲しいと言ってきました。こうして男はこの宮殿に滞在する事となりました。その間お姫様は男の傍を片時も離れずずっと一緒に過ごしました。
そして男とお姫様は恋に落ち、夫婦(めおと)となり、海の底の宮殿で、いつまでも幸せに暮らしました。
この話は紅玉海に伝わるお伽話ではではあるが、今から何世代も前、実際に紅玉姫にヒューラン族の婿が迎えられ、たいそう鱗が少ない子どもが生まれたという言い伝えがスイの里にはあり、この御伽草子が実話にもとづいて書かれた可能性は否定できないとされる。
歴史や史跡の旅~Chronicle Encyclopaedia~