MMO Raid Terms
WoW及び類似のアクションゲームにおけるPvE Raid戦闘でよく使われる概念・用語、つまり"Raid Terms"を紹介していく 今更WoWデビューする人はもうそんなに多くはないと思うが、少ないながらもたまにいるので、説明資料として
他ゲーム(FFXIVとか)でも通用するはず
英和用語変換資料として
昔はこういう記事書いてる人たくさんいたように思うけど、最近あまり見ないし、その割に結構新しい概念が登場してるなーと思ったので
紹介するだけじゃなく、ゲーム業界においてWoWがPvE Raidをこの15~20年で進化させてきた中で、どの辺のタイミングで登場し、プレーヤーに普及したか、私見を書いてく ここについてはあくまで私見
WoW以前からあったもの
自分はWoWからデビューなのでこのカテゴリのものは来歴詳しくない
Tank, DPS(Damage Dealer; DD), Healer
それぞれ盾役・壁役(Tank)、攻撃役(DPS/Damage)、回復役(Healer)という役割(Role)のこと
DPSはDamage Per Second(秒間ダメージ)の略なのでRoleの名前として本来不適当なのだが、「ダメなDDはDPSのことしか考えていない(ゆえにギミックをすっぽかして死ぬ)」といった揶揄がよくあって、転じてRole自体のことをDPSと呼ぶのが定着した
DPSを可視化するAddOn(有名なのはRecount)が普及したことも拍車をかけた WotLK(2008)の頃には一般化していたように思う
公式用語としては今でもDamage, Damage Dealerとされることが多いが、実際あまり使われない。DPSのほうが短くて楽だし
この3パターンの分担は昔からMO/MMOアクションゲームでふんわりあったのだが(FFXIとか)、WoW前後のアクションゲームにおけるPvE Raid/Dungeonで完全に定着したため、Holy Trinityとまで呼ばれることがある
少なくともWoWのRaid/Dungeonは、Vanilla(2004)の高レベル帯時点でこれらの役割分担が不可欠だったはず
40人Raidでは必要なTankの数はボスによって様々だった。NaxxのFour HorsemenのようなたくさんTankが必要なセットアップもあった
補助・強化役(Buffer, Supporter)というRoleが分離されているゲームもあるが、少なくともWoWからは消滅した(昔、Paladinなどが実質そういう扱いだったことがあったりした)
一応、DFのAugumentation Evokerでちょっと復活したが
TankがMain Tank; MT, Off Tank; OT (あるいはSub Tank; ST)と分離されることも多い
ボスによってはOTは不要なこともある
かなり昔(Vanilla~tBC、2008くらいまで)は、比較的Tanky(頑丈)なDPSが戦闘中に必要に応じてOTとして振る舞う戦術が採用されるボスもあったが、現代Raidではまずない
このように、戦闘中に複数のRoleを兼ねられるHybrid class/specが昔からあり、現代でもわずかに回復を手伝えるDPSなどが存在するものの、基本的にそれを前提にしたボスギミックが設計されることはWoWではまずない(逆にFFXIVではHealerのダメージが重要だったり、ゲームによって差がある)
Threat / Hate / Aggro
敵が、誰を脅威(Threat)に感じていて、あるいは誰を嫌悪(Hate)していて、優先的な攻撃対象としている(Aggro)か、という概念
内部では数値的に表現されランキング化されており、DPSが攻撃を集中しすぎたりするとThreatランクトップとなってしまい、TankからAggroを奪ってしまう=当然DPSはTankほど固くないので殴られて即死する、という現象が起こる
EQ(1999)とかFFXI(2002)の時点であったはずだし、もっと遡ることもできるかも
Vanilla(2004)~tBC(2007)くらいまではThreat管理がPvEグループ戦闘のメイン要素だった。WotLK(2008)で徐々にTank Threatの上昇がDPS/Healのそれを大きく上回るようになって矮小化されていき、特定のギミックボス以外では意識すること自体不要になった
したがって昔はThreat Ranking AddOnが重要だったのだが(有名なのはOmen)、今はTankでさえ不要
一部、OTとのThreat順位関係を管理しなければならない(失敗すると想定外の順序で殴られて大ダメージ)みたいなギミックボスがたまにいるが、現代Raidではそれもほとんど見なくなった
Threat管理が重要だった時期のPvEガイド記事や掲示板のやり取りではひたすら議論(罵倒)のタネだったので、概念としての普及度は当初から比較的高かったと思われる
が、野良で出会う平均的なプレイヤーがThreatをちゃんと管理できるくらいまで概念が普及するのと、Threat管理自体がWoW PvEで矮小化され始めるのが概ね時期を同じくしていた印象
結果として、現代Raid/DungeonでPvEにデビューした人は、なぜTankがいると自分が殴られないのか、逆にたまに殴られることがあるのかを、ちゃんと理解せずにプレーしてるんじゃないか、という気がしなくもない
現代RaidでThreatが問題になるのは、次のAddsのThreatであることが多い
Adds
戦闘途中で追加される敵のこと。語としてはAddition(al)sの略と捉えられる
最初フィールドにいないのに、時間経過や戦闘フェイズの進行によって追加される奴ら
これもごく初期のVanilla Raidですでにあるので、WoW以前からの概念だろう
現代Raidでは、ボス本体のThreat管理はほぼ消滅した(不要になった)が、戦闘のさなかで散発的に登場するAddsを的確にTankが引き受ける・集めるためのThreat管理は今も存在する
これをAddsを"キャッチ; Catch"すると呼ぶことが少なくともMKD/UTではよくある。ほかでも使われてるかはあまりわからないが、なくはなさそう
Addsはボス本体と違って様々な場所に出現するし、数も多かったりするし、出現直後にはTankがThreatを稼げていないので、うまくキャッチできないとチームが崩壊する
Taunt
「トーント」、ただ、字面から「タウント」と読んでも許される (当社比)
「挑発」の意で、敵を強制的にAggroするスキル類(ゲーム、クラスによって名前は違うが概念としては基本すべて同じ)
昔はTauntスキルを持っていないTankクラス(またはそれっぽいのを持っているが性能が悪いクラス)なんてのもあったりしたが、WoWでは少なくとも統一されて全Tankが持つようになった
範囲全体TauntとかGripしてTauntとか色々追加ギミックが付いて差別化されたりする
後述するDRの対象で、連続的にTauntしすぎると効かなくなることがある(2人のTank間で距離を離してずっとTauntし続けることでボスを右往左往させて殴らせない、というcheeseを防ぐ意味がある)
ただし全ての敵ではない。種類によってはDRなくTauntできるやつもいる(Addsなどはそうだったりする)
DR; Diminishing Return
日本語訳すると「収量逓減」だが、要は「だんだん効率が悪くなる・効かなくなる」性質
WoWのPvEだと、Tauntや、Stunなどの各種阻害系(CC)スキルが対象になっている
ただ、敵の種類によっては対象外だったりもするので、基本的にはエンカウンターごとに検証が必要
DRがフルに入ったあとは、一定期間対象スキルを使わないでいると再び効くようになる
どちらかというとPvPで意識が必要な概念
WoW以前からゲームによってはあったかもしれないが、少なくともWoWではtBC以降に本格的に導入されたはず
Vanilla時代にはまともに概念として存在しなかったので、PvPでRogueにフルCCをひたすらかけ続けられて1分間固められるなどという惨事もあった
WoW時代に定着(用語確立)あるいは出現したもの
Cleave / Frontal Cone Attack
敵の向いている方向と対応した攻撃種類を指す概念
切り裂き、薙ぎ払い攻撃(Cleave)
敵正面120°くらいの範囲を薙ぎ払う。近接攻撃程度の有効距離ものを指す
基本的にAggroを取っているTankは敵正面に立たざるをえないので、Tankだけで攻撃を受けるのが正解であることが多い
たまにランダム方向を向いてからCleaveとか、Cleaveを複数人数でShare(後述)しなければならないといったギミックもある
古くからあり、LK頃にはすでに共通語彙として通用していたのは確実
プレイヤー側が2~3体の敵を同時に攻撃して処理するパターンも同じくCleaveと呼ぶ
正面扇状攻撃(Frontal Cone Attack)
敵正面30°~90°くらいの範囲に浴びせる、長距離(近接攻撃+@程度から無限まで)の攻撃
見た目の類型によって、ブレス(Breath)、衝撃波(Shockwave)、斉射(Barrage)と呼ばれたりもする
Breathは口から吐く火炎や冷気の息。ドラゴンなどの首の長いクリーチャーの場合、当たり判定は頭部付近から発生するのでボスの真下は安全だったりする
Shockwaveは振った武器や踏みつけた足などから発生し、地面を伝うような性質。スタン(行動不能)やノックアップ(打ち上げ)・ノックダウン(叩き付け)を伴うものも多い
Barrageは重火器から放たれる連続射撃で、大抵の場合当たり判定の発生・間隔が早い。とはいえ基本はBreathと同じ
古くからあったのだが、"Frontal"で共通語彙として類型化され、どこでも通用するようになったのは意外と最近という印象
Frontal Coneの逆(後方)に打ってくる尻尾振り(Tail Swipe)を、主にドラゴンタイプのボスが使用してくることもある
昔はドラゴンはブレスと尻尾をセットで持っているのがお決まりで頻出だったが、最近はそうでもなくなった
Void Zone
地面に出るダメージゾーン。tBCの5 man dungeonに同名の攻撃を使ってくるボスがおり、それが一般用語として後に定着した
とにかくVoid Zoneは回避するのがRaidの基本で、昔は皆がそれさえできればクリアできるくらいのボスも多かった
大きく分けて、視覚的に予告位置が表示された数秒後に炸裂し消えるタイプと、ほとんど予告時間なく出現してから一定時間残るタイプがある(それらの組み合わせもある)
Defile
Void Zoneの一種で、誰かが避けずに食らっていると範囲拡大していくタイプ
WotLKのラスボスLich Kingが使ってきた悪名高き攻撃で、その後似たような能力は全部Defileと呼ばれ続けている
Trap
「罠」。Void Zoneの一種と言えなくもない
一般的にVoid Zoneより小さく、それこそ狩猟用の罠のように1人をターゲットにするようなサイズ
その代わりかかったら(高難易度設定だと)Raid Wipeを引き起こすなどのギミックであることも多い
Defileを使ってきたLich KingはHeroicではTrapも使ってくる厄介なやつだった
Soak
Void Zoneと同様に地面に出る一定範囲のゾーンだが、逆に回避せず誰か1名または若干名で受け止める必要のあるギミック。Soakは(水に)浸す、染み込ませる、吸い取るのような意味
Void Zoneが一般的なボスギミックとして定着したのちに登場したカウンター。2010年前後のWoW Raidで出現し始めた印象
サイズ的にはTrapと同サイズぐらいのものが一度に複数出現するタイプが多いが、たまにraid全体ないし半分くらいのメンバーが入らなければならない大きなパターンもある
登場時期にはVoid Zoneと見た目上の区別が乏しく覚えるしかなかったが、後にSoak準備できていない(誰も炸裂地点に入れていない)と派手な光の柱のようなエフェクトが出現し、Soak準備できるとエフェクトが消える、という視覚的識別情報が追加されて定着した
基本的にはSoakした本人には少~中ダメージ・Soak失敗するとraid全体に大ダメージ、という設定であることが多い。高難易度だとwipe原因になる
Orb Soak
球(orb)状のエネルギー体が特定の法則に基づいて浮遊するので、プレイヤー自身の体で受け止める・体当りするギミック
失敗するとorbはボスに吸い取られたり所定の位置に到達したりといった結果となり、大抵はこちらもraid wipe原因となる
Share
所定の人数以上でダメージを分担共有するギミック。FFXIVではよく頭割りと呼ばれる
Soakと組み合わさった地面範囲Shareであるパターンと、raid内のランダムまたは特定法則に基づいて決定される1名または若干名がshare対象として指名されるパターンがある
Tank and Spank
「TankしてSpankする(ひっぱたく)」だけのボスエンカウンターを指す
Raidの方法論・典型例が固まってくるにつれ、何らかのギミックがあってそれを突破するための作戦をこなさねばならないボスと、とにかくTankがいてHealしてあとはDPSすればいいだけ、という単純なボスとが両極端とみなされるようになってきた
Void Zoneの一つもなく、DPS陣はボスの背中に位置取りしてひたすら殴るだけのような単純ボスをやがてTank & Spankと呼ぶようになり、典型例であるNaxxのPatchwerkの名前を取って、"Patchwerk boss"と別名したりもする
SimulationCraftの単体ボスモードシナリオは今も"Patchwerk"と名前がついている
流石に今どきTank and Spankボスはあまりいない
Dance
敵の攻撃(例えばVoid Zoneの発生など)が連続的になっており、回避するために一定のパターンで、もしくはランダムな予備動作や視覚効果を見てアドリブで、Raid全体が一斉に動き続けるようなエンカウンター内のギミックを指す
その後もFireland Ragnarosや、Blackrock FoundryのHans & FranzのようにDanceが肝となるエンカウンターは定期的に作られ続けている
Danceボスは多くの場合、失敗すると即死級の大ダメージを受ける設定になっていることが多く(そうでないならDance自体は余りエンカウンター内の重要なギミックとされていないわけなので)、Danceを覚えられないとRaidの足を引っ張る
WoW系ゲームのRaidが「大縄跳び」とか「マスゲーム」とか揶揄される理由の一端を担っているとも言えるが、典型的なDanceボスでなくとも高難易度のボスを最速攻略のために突き詰めるとRaid全体の動きを統一することになり、後発組がより安定する戦術で倒すようなボスもDanceじみた動きになることは多いので、必ずしもどのボスもDanceさせられるわけではない
Stack / Spread
Splash
距離減衰
Link or Chain
Double Attack
Bait