LtVPickUp~How VCs can combat similarity bias_20250710
▼ケース記事
▼要約
カザフスタンのUrbanTech企業Qala AIは、日本のエンジニアリングコンサルティング会社・日本工営と、スマートシティ開発とアルマトイの地震リスク分析に関する覚書を締結した。両社は協力して、都市のレジリエンス向上と持続可能なインフラの整備を目指す。
Qala AIは2023年設立のスタートアップで、都市の脆弱性を分析する「Resilient City Platform」などを展開しており、2025年の大阪・関西万博にも出展した。今回の提携は、中央アジアや世界の他都市にも応用可能なモデルになることを目指している。
また、アルマトイ市は地震対策の一環として、中国地震局とも連携を進めている。
▼初期仮説
行政だけでは地震リスク分析・対策が困難で、民間による技術支援が求められている
中央アジアでは、他にも地震リスクの高い都市があり、横展開できる可能性がある
▼事前リサーチ by Yuki
Q. 中央アジアの地震頻度は?
キルギスでは、1日およそ300回、年間で13,000回程度の地震が観測されている
→中央アジア全体が非常に活発な地震帯に属している
EMCAによると、中央アジアでは過去に約33,620件の地震が記録されている
Q.地震による経済的リスクは?
中央アジア5カ国への地震リスクに関する最新モデルでは、2020年シナリオにおける年間平均経済損失は約20億USDとされている
特にキルギスとタジキスタンが高リスク
国連ESCAPによると、カザフスタン国内の地震による年間平均被害額は約750百万USDで、そのうち64.5%がアルマチ州が占めている
Q.アルマトイ市が抱える地震に関する問題にはどんなものがある?
地震リスクの高さと潜在被害の大きさ
地殻構造の調査では、アルマトイ北部には活発な埋没断層があり、中規模でも重大な被害を招く恐れがあると報告されている
特定の断層において「中程度の地震でもかなりの被害」を想定する必要があるとされている
OECDによる分析では、アルマトイ近郊では弱い揺れは日常的に発生し、主要都市での大規模地震の確率は高いものの、行政の監視体制と復興体制には限界があると指摘されている
老朽化建築物の脆弱性
ソ連時代(1990年以前)に建てられた無筋コンクリートや煉瓦造の集合住宅は、構造的耐震性能が低く、大規模地震時に高い倒壊リスクを抱えている
行政の人的・技術的リソース不足
OECDの報告によると、地震対策には高度な地理空間解析や長期的なモニタリングが不可欠だが、行政にはその実効能力が不足しているとされている
UNDRRなどの国際機関は、公共と民間の協働体制(PPP)の構築を強く推奨しているが、アルマトイではその実装が進んでない
Q.従来の方法と何が違うのか
リアルタイム検知とノイズ除去
従来、地震は波形に基づいた判定が主だったが、機械学習を用いることで地震波(P波)の識別精度が99%以上に向上し、誤警報の大幅削減に成功しています。CNN や GAN+RF モデルは、3秒以内のリアルタイムで精度の高い検出が可能になった
構造物応答の予測と制御
LSTMやファジィ制御を活用したAIモデルでは、構造物の応答を事前予測し、揺れに応じた制御(例:可変剛性構造)を行うことで従来よりも損傷を軽減できるケースが報告されている
大規模データに基づく脆弱性評価とコスト最適化
ビッグデータ解析と不確実性定量化技術により、耐震評価モデルの正確性・信頼性が向上し、限られた予算を効率よく配分するシナリオ設計が実現されている
迅速な被害把握と対応計画
地震後の被害評価において、Transformerなどを活用したAIは、衛星画像と連携し被害クラスを分類、手動調査よりも遥かに高速で正確な推定が可能
Q.他にニーズがある国はどこがあるのか?
トルコ/シリア地域
2023年の大地震を受け、衛星画像解析や被災支援アプリ等にAI導入が進展
メキシコ
SASMEXによる公共向け地震警報は地域網によるもので、これにAIによる震源解析を加える形で進化中
インドネシア
GoogleやLinux Foundationといった組織が地震警報システムを共同開発中
その他、イタリア・チリ・ペルーなども初期段階のAI警報や被害評価システムの活用が試験されている
▼結論
行政だけでは地震リスクの分析・対策に限界があり、AIやデジタル技術を持つ民間企業の支援が不可欠となっている。
中央アジア全域に地震リスクの高い都市が点在しており、アルマトイを起点とした横展開の可能性は高い。