NSTX
#装置解説
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NSTX(National Spherical Torus Experiment)は、アメリカ合衆国のプリンストン・プラズマ物理研究所(PPPL)で行われた核融合研究の実験装置です。この装置は、球状トカマク(Spherical Tokamak、略してST)と呼ばれる特殊な設計を持つトカマク型核融合装置で、従来のトカマクに比べて構造が球形に近いことが特徴です。NSTXは1999年に稼働を開始し、2011年に一時停止、改良を加えた新しいバージョン「NSTX-U(Upgrade)」が2016年に運用されました。
核融合装置トカマクとは
トカマクは、プラズマを高温に加熱して安定させ、核融合反応を引き起こす装置の一種です。トカマクでは、磁場を使ってプラズマをドーナツ型(トーラス形)に閉じ込めることで、プラズマが壁に触れることなく持続することができます。この閉じ込めによって、十分な温度と圧力を保持し、核融合反応を促進させることが目的です。
NSTXの特徴
1. 球状トカマク
従来のトカマク装置は比較的細長いドーナツ型のトーラスですが、NSTXは球状に近い形状を持っています。この「球状トカマク」は、磁場の閉じ込め効率が高く、装置のサイズを小さくできるというメリットがあります。
球状トカマクはプラズマの圧力を強く高めることが可能で、同じ磁場強度であっても従来型トカマクよりも高い性能を発揮する可能性があります。
2. プラズマ閉じ込めの効率性
球状トカマクの設計により、NSTXでは磁場の強さに対してより高いベータ値(プラズマの圧力と磁場の圧力の比率)を実現しています。これにより、少ない磁場で高い閉じ込め効率が達成でき、将来の核融合炉のコスト削減につながる可能性があります。
3. 小型化と経済性
球状トカマクは従来型トカマクに比べて小型化が可能です。小さな磁場で同じ閉じ込め性能を出せるため、将来の実用核融合炉の建設コストや運用コストを下げることが期待されています。
4. NSTX-U(アップグレード)
NSTXの稼働後、改良型のNSTX-Uが建設されました。NSTX-Uはさらに強力な磁場と高温のプラズマを生成することができるように設計され、核融合反応に向けた実験の精度を高めることを目指しています。
NSTXの目的
NSTXの主な目的は、球状トカマクの閉じ込め性能を研究し、将来の商用核融合炉に向けた設計指針を得ることです。具体的には、以下の点を探求しています。
核融合反応を長時間にわたって安定的に維持する方法の開発
プラズマの高ベータ運転を実現し、より効率的なプラズマ閉じ込めの達成
核融合炉のサイズやコストを削減し、実用化への道を切り開くための新しい技術の実証
核融合への貢献
NSTXは、従来のトカマクよりも効率的でコンパクトな核融合炉設計の研究に重要なデータを提供しており、将来的なエネルギー源としての核融合発電の実現に貢献しています。これにより、地球規模のエネルギー問題を解決するためのクリーンで無尽蔵なエネルギー源の確立を目指しています。
まとめ
NSTXは、球状トカマクという革新的な設計により、従来のトカマク装置よりも小型かつ効率的な核融合装置の実現を目指した実験装置です。NSTX-Uへのアップグレードも行われ、核融合研究における重要な一歩となっています。この研究が成功すれば、将来の商用核融合炉の実現に向けた道筋が大きく前進するでしょう。