GAM
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GAM(ジオデシック音響モード)は、トカマク型核融合装置において発生するプラズマ中の低周波振動の一種です。
GAMは、プラズマの安定性や閉じ込め性能に影響を与える「乱流」を制御する役割を持ちます。
核融合プラズマにおける「音波」のような性質を持ち、特にプラズマの回転や電場の振動に関連しています。
1. 背景 – プラズマの乱流と輸送問題
核融合炉では、高温・高密度のプラズマを磁場で閉じ込め、核融合反応を維持します。しかし、プラズマは非常に不安定であり、乱流が発生します。
乱流は、プラズマ内の粒子やエネルギーが外部に流れ出す原因となり、核融合反応を維持するためのエネルギー損失を引き起こします。
この乱流を抑制する方法が、核融合研究の大きな課題です。
2. プラズマ中の波動モードの発見
1970年代から1980年代にかけて、プラズマ中の様々な波動が発見されました。
その中でも、特に重要なのが以下の2つのモードです。
Zonal Flow(ゾーナルフロー)
プラズマの局所的な回転によって形成される帯状の流れです。
乱流を抑制し、プラズマ閉じ込め性能を向上させる役割があります。
磁場に沿って静的に存在します。
GAM(ジオデシック音響モード)
ゾーナルフローと異なり、時間的に振動する帯状の流れです。
プラズマの電場が周期的に振動し、乱流の強度が変化します。
磁場の曲率(ジオデシック効果)によって発生するため、「ジオデシック音響モード」と呼ばれます。
3. GAMの発見と理論的背景
GAMは1980年代に理論的に予測され、その後の実験で観測されました。
GAMは、磁場の曲率が関与するため、トカマク装置のように磁場が環状に配置された装置で主に観測されます。
GAMの特徴は、低周波(数kHz程度)で、プラズマのイオン音速によって決まる振動数を持つことです。
GAMは、乱流が活発なプラズマ領域で自然に発生し、乱流のエネルギーを吸収して抑制する役割を果たします。
4. GAMの特徴と役割
1. 低周波の振動
GAMの振動周波数は、イオン音速(プラズマ中の音速)とプラズマのサイズによって決まります。
一般的に、数kHz〜数十kHzの範囲で振動します。
2. プラズマの回転や電場の振動
GAMはプラズマの電場が周期的に振動する現象です。
電場が振動することで、プラズマの粒子やエネルギーの輸送が変化します。
3. 乱流の抑制
GAMは乱流のエネルギーを吸収し、プラズマの閉じ込め性能を向上させます。
これにより、エネルギー損失が減少し、核融合プラズマの安定性が向上します。
4. 空間構造
GAMはプラズマのトロイダル方向に均一ですが、ポロイダル方向には振動の節が存在します。
磁場の曲率によって、特定の位置で振動が強くなる特徴があります。
5. GAMの観測方法
GAMは、以下のようなプラズマ診断装置によって観測されます。
Doppler Reflectometer(ドップラー反射計)
プラズマ中の電場や密度の変動を測定する装置で、GAMの振動を捉えることができます。
Langmuir Probe(ラングミュアプローブ)
プラズマ中の電場や電子密度を直接測定します。
Heavy Ion Beam Probe(重イオンビームプローブ)
プラズマの電位分布を計測し、GAMによる振動を検出します。
6. GAMの応用と研究の進展
1. EASTトカマクでのGAM研究
中国のEASTトカマクでは、GAMがI-modeプラズマの維持や閉じ込め性能向上に重要であることが確認されています。
特に、リチウム注入によってGAMが誘発されることで、乱流が減少し、プラズマ閉じ込めが改善されます。
2. ASDEX Upgrade(ドイツ)やDIII-D(アメリカ)での研究
複数のトカマク装置で、GAMがH-modeやI-modeのプラズマ制御に関与していることが示されています。
7. GAMの重要性と今後の展望
GAMは、将来の核融合炉において、プラズマの安定性を高める自然な自己組織化現象の一つです。
GAMを積極的に制御することで、プラズマの乱流を抑え、核融合反応を持続的に維持することが期待されています。
現在の課題は、GAMの発生条件や制御方法をさらに詳細に理解することです。
まとめ
GAMは核融合プラズマ中の低周波振動で、プラズマの安定性を高める役割があります。
乱流を抑制し、エネルギー損失を減少させることで、核融合装置の効率が向上します。
EASTやASDEX Upgradeなどの装置で、GAMの制御が核融合の成功に直結すると考えられています。
今後の核融合炉の実現に向けて、GAMはプラズマの制御において欠かせない要素となるでしょう。