閉じ込め時間
#用語解説
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閉じ込め時間(エネルギー閉じ込め時間)$ \tau_Eの具体的な計算方法は、プラズマの総エネルギーとそのエネルギー損失率を測定し、それらの値から求めます。以下にステップごとに詳細な計算方法を説明します。
1. プラズマの総エネルギー $ W の計算
プラズマの総エネルギー $ W は、プラズマ中の電子やイオンの運動エネルギーの合計で、次のように計算します。
$ W = \frac{3}{2} n T_e V + \frac{3}{2} n T_i V
ここで:
$ n はプラズマの粒子密度(例えば、電子密度やイオン密度として使用します。D-Tプラズマの場合、通常は等しいと仮定)。
$ T_e は電子の温度(単位は keV など)。
$ T_i はイオンの温度(単位は keV など)。
$ V はプラズマの体積(m³)。
この式を使って、プラズマ中の電子とイオンの熱エネルギーを計算し、それらを合計してプラズマの総エネルギー $ W を求めます。
2. エネルギー損失率 $ P_{\text{loss}} の計算
次に、プラズマから外部へ失われるエネルギーの速さ、すなわちエネルギー損失率 $ P_{\text{loss}} を求めます。エネルギー損失には以下のような要因があります。
放射損失:プラズマ中の不純物が電磁波としてエネルギーを放射します。
粒子損失:プラズマから逃げ出す粒子がエネルギーを持ち出すことで生じます。
熱伝導損失:プラズマ内部のエネルギーが外部へ熱伝導として流出します。
これらの損失は、各種プラズマ診断装置を使って測定します。たとえば、放射損失はX線検出器、粒子損失は検出器や干渉計などを使って測定できます。
プラズマのエネルギー損失率 $ P_{\text{loss}} は、これらの損失成分を合計したものです。
3. エネルギー閉じ込め時間 $ \tau_E の計算
エネルギー閉じ込め時間 $ \tau_E は、総エネルギー $ W をエネルギー損失率 $ P_{\text{loss}} で割ることで求めます:
$ \tau_E = \frac{W}{P_{\text{loss}}}
この式は、プラズマのエネルギーがどれくらいの速さで失われるか(損失率)に基づいて、エネルギーをどれだけの時間保持できるかを表します。
計算の具体例
例えば、以下のようなパラメータを持つプラズマの場合:
粒子密度 $ n = 1.0 \times 10^{20} \, \text{m}^{-3}
電子温度 $ T_e = 10 \, \text{keV}
イオン温度 $ T_i = 10 \, \text{keV}
プラズマの体積 $ V = 10 \, \text{m}^3
エネルギー損失率 $ P_{\text{loss}} = 1.0 \times 10^6 \, \text{W}
[[1. プラズマの総エネルギー $ W
$ W = \frac{3}{2} n T_e V + \frac{3}{2} n T_i V
$ = \frac{3}{2} \times (1.0 \times 10^{20}) \times (10 + 10) \times (10)
$ = 3 \times 10^{22} \, \text{eV}
eV をジュールに換算するために $ 1 \, \text{eV} = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{J} を使います。
$ W = 3 \times 10^{22} \times 1.6 \times 10^{-19} = 4.8 \times 10^3 \, \text{J}
2. エネルギー閉じ込め時間 $ \tau_E
$ \tau_E = \frac{W}{P_{\text{loss}}}
$ = \frac{4.8 \times 10^3}{1.0 \times 10^6}
$ = 4.8 \times 10^{-3} \, \text{s} = 4.8 \, \text{ms}
このように、エネルギー閉じ込め時間はプラズマの持つエネルギーと損失率に基づいて計算できます。エネルギー損失が少なく、プラズマのエネルギーが高ければ、閉じ込め時間は長くなります。
https://inis.iaea.org/collection/NCLCollectionStore/_Public/08/300/8300408.pdf
エネルギー損失率 $ P_{\text{loss}}がどうやって計測しているか、色々調べてみたけどイマイチわからなかったmasaharu.icon
入れたパワーに対して、蓄えたエネルギーを割ることにより閉じ込め時間を算出しているぽい
Research Updates
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/4743978/76_p023.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspf/78/11/78_11_1231/_pdf
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プラズマのエネルギー閉じ込め時間(エネルギーがプラズマにどれだけ留まるかの指標)は、プラズマに蓄積されたエネルギー $ W を、外部から投入された加熱パワー $ P_{\text{input}} で割ることで求めます。これを式で表すと、次のようになります:
$ \tau_E = \frac{W}{P_{\text{input}}}
ここで:
$ W はプラズマに蓄積されているエネルギー(通常、ジュール単位)
$ P_{\text{input}} は外部からの加熱パワー(ワット単位)
この式は、投入したエネルギーがどれくらいの速度で失われていくか(エネルギー損失の速度)を示しており、閉じ込め時間が長いほどプラズマが安定してエネルギーを保持していることを意味します。
https://www.qst.go.jp/uploaded/image/8284.gif
https://www.qst.go.jp/site/jt60/5108.html
定常状態ならこれでいいらしい
立ち上げ時はだめだけど、加熱して定常状態になった時はPin = Poutが成立するからこれでええのか
なんかイメージしずらいmasaharu.icon
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「ローソン条件を満たすプラズマをつくること」と「そのプラズマを維持して核融合を起こし続けること」は、確かに異なるプロセスで、核融合研究においてそれぞれが重要な課題です。
1. ローソン条件を満たすプラズマをつくること(立ち上げ)
まず、プラズマの立ち上げ段階では、大量のエネルギーを瞬時に投入してプラズマを目標温度・密度まで急激に上昇させ、核融合に必要な状態(ローソン条件を満たす状態)を一時的にでも実現するのが目的です。この段階は、主にプラズマの生成や加熱が中心で、まだ安定的な閉じ込めや持続的な反応には至っていません。
2. プラズマを維持して核融合を続けること(定常状態の維持)
一方、ローソン条件を満たした後、そのプラズマ状態を長時間維持し、エネルギー供給と損失をバランスさせ続けることが次の課題となります。この段階では、プラズマが安定して反応を維持できるように、エネルギー損失(放射損失や粒子の逸脱など)を補うためのエネルギー供給や閉じ込めが重要になります。ここで初めて「定常状態の維持」や「閉じ込め時間」の概念が出てきます。
立ち上げと定常状態の違いのまとめ
立ち上げ:プラズマを目標の温度と密度まで急激に高め、核融合条件に到達させる。短時間でエネルギーを大量投入し、ローソン条件を満たす状態にすることを重視。
定常状態:ローソン条件を満たしたプラズマをできるだけ長時間維持し、核融合を持続させる。エネルギーの供給と損失のバランスを取り、安定した反応を保つことが目的。
イメージしづらい理由
プラズマ生成直後の不安定な状況や短時間の変化が中心になるため、定常状態におけるエネルギーバランスや閉じ込め時間などが直感的にわかりにくいのも無理はありません。立ち上げの段階は非常に動的で、エネルギーを瞬時に投入して目標状態に持っていくプロセスです。それに対して定常状態は、ある意味「落ち着いた」状況で、エネルギー供給と損失が釣り合っているため、長時間にわたって安定した状態を保つことを目指します。
したがって、ローソン条件を一時的に達成することと、それを長時間にわたって安定的に維持し続けることは、まったく異なる技術とアプローチが必要です。このため、核融合研究では、立ち上げと定常状態の両方が重要な研究課題として扱われます。