ゲームの社会応用
シリアスゲーム
シリアスゲームとは「エンターテインメント、楽しさ、楽しみを主な目的としないゲーム:Games that do not have entertainment, enjoyment or fun as their primary purpose (Chen & Michael 2005)」である。
Chen, S., & Michael, D. (2005). Serious Games: Games that Educate, Train and Inform. USA, Thomson Course Technology.
ゲームの定義とのコンフリクト
「本気でない、日常生活の外部にある自由な活動」「マジックサークル」(Huizinga “Homo Ludens”)
教育、軍事、科学調査、医療、緊急管理、都市計画、工学、政治など、幅広い用途に用いられる。
ビデオゲームの社会応用は多くの学術雑誌や助成金などのテーマになるほか、論文や書籍も多く出版されるなど2000年代から注目を集めている
藤本徹. 2009. シリアスゲーム : 教育・社会に役立つデジタルゲーム. 東京電機大学出版局.
Prensky, Marc, and 藤本徹. 2009. デジタルゲーム学習 : シリアスゲーム導入・実践ガイド. 東京電機大学出版局.
McGonigal, Jane, 藤本徹, 藤井清美, and 妹尾堅一郎. 2011. 幸せな未来は「ゲーム」が創る. 早川書房.
事例
3rd World Farmer
fold.it
America's Army
Plague Inc.
ゲーミフィケーション
ゲーミフィケーションとは「ゲームメカニズムを用いた社会活動の改善」もしくは「ゲーム以外の文脈でゲーム要素を展開する動作または方法(Deterding et al. 2011)」である。
Deterding, Sebastian, Dan Dixon, Rilla Khaled, and Lennart Nacke. 2011. “From Game Design Elements to Gamefulness: Defining" Gamification".” In Proceedings of the 15th International Academic MindTrek Conference: Envisioning Future Media Environments, 9–15.
これまでもゲームの応用は、ゲーミング・シミュレーション、エデュテインメント、シリアスゲームなどで議論されてきた。これらとの違いは、一次的な対象がゲーム以外の活動であることにある(井上 2020)。
2010年代前半にシリコンバレーなどで、GamificationによりTech系のベンチャーが多数生まれた。デジタル端末の普及がその背景にある。
ポイント、バッジ、ランキングという3要素が主に用いられる。代表的な事例としては下記などがある。
Foursquare, Swarm
Nike+
ビッくらポン:無添くら寿司
井上明人. 2012. ゲーミフィケーション : 「ゲーム」がビジネスを変える = Gamification. NHK出版.
ゲームの教育利用
ゲームの社会応用において、とりわけゲームの教育利用(Game-Based Learning) に注目が集まっている
本来はゲームは「日常生活の外部にある、自由な活動」(ホイジンガ)であるはずなのに、そこから学ぶことができる。また、ゲームには高い知識生成性とコミットメントやモチベーションを強化する力がある。これを活かして教育に活用したいという発想が基礎にある。
いくつかの研究でゲームの教育利用の有効性(と危険性)が検証されてきた(Gee 2003; Ferdig and de Freitas 2012)。
Gee, J. P. 2003. What video games have to teach us about learning and literacy?. New York: PalgraveMacmillan.
Ferdig, R. E. and de Freitas, S. (Eds.). 2012. Interdisciplinary advancements in gaming, simulations and virtual environments: Emerging trends. Hershey, PA: Information Science Reference.
オープンソースツールが一般化してきたことで、シリアスゲームの利用や開発の一般化が進んだ
ゲームの社会利用のためのエコシステムの発達
通常、教育は学校ベースで認識されるが、これらのゲームはより広い範囲を対象とする
例えば『三國志シリーズ』で歴史について学ぶ、『おしゃれ魔女 ラブ&ベリー』でファッションについて学ぶ、RTAゲームで戦争について学ぶ、など枚挙に暇がない
実践では、教育用ゲームと一般ゲームを利用する場合の両者がある
ゲーム開発の教育利用の例もある
ゲームエンジンの利用
MODを活用した事例なども存在する
シリアスゲーム開発を通じた教育(藤本 2011)
「シリアスゲーム開発を通した学習は、1970年代にはすでにその可能性が指摘されていた(Abt 1970)。シリアスゲームの概念を提唱したアブトは、ゲームデザインの過程で行われる問題状況の分析が、問題を多面的に捉えて検討する活動を伴うことに着目した。複雑な問題状況を分析し、変数を可視化したり構造化したシステムとして捉えたりするデザイン活動は、問題に内在する重要な要素やその関係性の理解につながる学習活動として機能する(藤本 2011, 53-4)。」
Abt, C. 1970. Serious Games: The Art and Science of Games that Simulate Life in Industry, Government and Education. Viking Press.
構築主義(Constructionism)の考え方に基づいている
「何らかの作品を創造する活動を通して、すでに持っている知識に新しい経験を組み合わせて構成する過程をいかに助け、学習者の知識構成を促進するかという考え方(藤本 2011, 54)」
シリアスゲームの開発をゲーム開発者教育に取り入れる意義
1. ゲーム開発者の社会的意識の向上につながる
2. ゲームのテーマに関心を持つ人々とつながるきっかけが生じる
3. 学習者のその後のキャリア選択の幅を拡げる
ゲームエンジンやMODを活用したゲーム開発の事例も多い。
シリアスゲームのウェブデータベース