文化資源学特別講義b_2020_04
マンガ・アニメ・ゲームを活用した地域振興・コンテンツツーリズム
コンテンツと旅行の概史(玉井 2019)
前近代:江戸時代は関所により人の移動が制限されていた、社寺参詣が関所手形発行における主要な理由であり、伊勢神宮・熊野三山・富士山などには御師(参詣を取り扱う旅行業者のような存在)が存在した
和歌、道中記、浮世絵など
近現代:交通網の整備により観光地整備が進むとともに、映画・テレビ番組の活用、ロケーション誘致などが活発化
尾道三部作に代表される映画、大河ドラマ、小説
現代:メディア文化の変容により、より細分化
マンガ、アニメなどに注目があつまる
フィルムコミッション
映像作品のロケーション撮影を誘致する機関、コンテンツ活用型の地域振興やコンテンツツーリズムの先駆け的実践
国内では2000年ごろから活発化
行政機関(自治体・コンベンションビューロー・商工会議所など)内に設置される非営利活動であり、目的は活性化、観光促進、文化振興、人材育成など(増本 2019)
業務内容:ロケーション撮影の誘致・プロモーション、撮影支援、作品による地域活性化、地域啓蒙・PR
直接的効果:宿泊費、交通費、食費、人件費など
間接的効果:地域の知名度向上、観光客誘致
聖地巡礼(山村 2018)
旅行者の情報化や動機の変容などがそのきっかけだと考えられる
聖地巡礼という概念として捉えられ、現象化したのは1990年ごろとされる、先行事例としては下記が挙げられる
ファン同士、ファンと住人の交流を楽しむ人がいるほか、リピーターも存在する
活発に撮影を行うほか、観光客自身が情報発信を行う
巡礼ノート・交流ノート
絵馬
ブログ・SNS
地元住人にとっては、短期的な利益につながるほか、地域資源の魅力に気づく・再発見につながる
作品関係者には、好意的に捉えられる場合も多く、ライセンス発行などで協力する場合も、またファンが迷惑をかけた場合などは注意喚起を行うといった役割を担うことも
大河ドラマと比較すると、マスメディア(テレビ・雑誌など)による情報発信が主だが、アニメ・マンガの場合はユーザの旅行記などの割合が高い
事例研究
「らき☆すた」埼玉県鷲宮町
テレビ放映を受けて、来訪者が増加
その後、鷲宮町商工会が製作者へコンタクトをとり、地域振興体制が構築された事例
声優イベント、キャラクター石碑設置、オリジナルグッズ開発、特別住民票発行、スタンプラリー実施などといった施策を展開
「太秦戦国祭り」京都府京都市(福田 et al. 2009)
京都市太秦地区の映像産業の再活性化
新しい歴史創作のユーザ参加型イベント
表2 日本国内におけるマンガ・アニメを活用したまちおこし事例(日本動画協会調べ)
参考文献
玉井建也. 2019. “コンテンツツーリズムの歴史.” In コンテンツツーリズム研究, edited by 岡本健, 増補改訂版, 48–51. 東京: 福村出版.
増本貴士. 2019. “コンテンツツーリズムとコンテンツ制作.” In コンテンツツーリズム研究, edited by 岡本健, 増補改訂版, 48–51. 東京: 福村出版.