All Books Consideredという第三の場所
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「糸島の顔が見える本屋さん(通称「糸かお」)」の2階にあるため見つかりにくく隠れ家のような場所になっている。
店長の中田健太郎が大学2年の時にはじめた本屋で、もともとは同じフロアーの斜向かいにある四畳半の狭い部屋を借りて営業していたのだが、本が収まりきらなくなって3年目に引っ越しをした。
僕は縁あってここで1年以上働かせてもらっている。
といっても無報酬な訳だが、代わりに本を読めるので図書委員のような気持ちで事に仕えている。お昼ご飯は出るよ。
初期の立ち上げメンバーは4人で、うち2人が就職の関係でいまは離れている。
店長も今年大学を卒業(ストレートで!!?)して、あと大学に残っているのは僕と、もはや何こ上なのか分からないけど大学4年生になられた"たかぴー"さんだけだ。もうひとり一緒に後から入ったメンバーがいて、"エグゼクティブ愚か"名でとてもキュートなぬいぐるみ(人の内臓、脳みそ、眼球、歯、植物などさまざま?)や缶バッチを製作していらっしゃるお姉さんがいるけど、この方とは一度か二度しかお会いしたことがなくいまだに正体がよく分かっていない。
私とABCとの出会いは去ること2年前の夏休みである。大学周辺には本屋がなく、調べてみたら筑前前原駅近くに本屋を見つけた。どうやら九大生がやっているらしい、と父親から教えてもらった気もする。私は捻くれ者で、正直あんまり期待はしていなかったが、何かがあるかもしれないと思って自転車を走らせること約20分ほどで到着した。1階にある「糸かお」を通り抜けると階段が見えてくる。なるほどこの上か。階段は急で、踏むたびに木の板が軋む音がする。https://scrapbox.io/files/68562fe5862ee0ed54a8bef2.jpeg 相当古い建物なのか、2階の床下が階段上から覗き込めるようになっている。恐る恐る2階に足を運んでみると、一人二人通るのが精一杯のまさに鰻の寝床のような狭い廊下の奥先から聞き慣れないラジカセの音色が聞こえてきた。Nujabesだろうか。扉の前には「あいてる」と書かれた木の板が立てかけられており、開いてるんだと妙に納得する。扉を開けて中に入ると店員が窓際のカウンター(といってもDIYで作った棚を会計用に拵えたもの)から顔を覗かせて、窮屈そうに立ち上がりながら挨拶をしてくる。私も四畳半しかないこの場所での適切な振る舞い方が分からないまま、なけなしの社交性で以て挨拶を返す。店内には所狭しと並べられた本と、小さめのソファー、それから古着が置いてあった。頭上を見上げるとなぜか紐で縛り上げられた小冊子が吊り下げられており、窓にはこれまで来店した人のメッセージカードのようなものがペタペタと貼り付けられてあった。なかには栗原康と宛名が書かれた葉書もあったがその時は無視した。四畳半の狭い部屋に店員と私の二人、前述したような内容で、異様な空気感であることはお分かりいただけるだろう。とりあえずこの場所から排除されまいとして適当に本を手に取ってみる。すると店員から声をかけられた。まだお互いのことを全く知らない状態なので、探り探り会話を進めていく。よくある世間話も一段落したところで、私は手持ち無沙汰になり、ふたたび本の背表紙に指先を這わせていく。ちくま学芸文庫が多く並べられてあることに気づく。選書は良いように思えた。この店員は何に興味があるのだろうと気になって、話しを振ってみると、どうやらハンナ・アーレントを敬愛しているらしいことが分かった。『人間の条件』の読書会をしているという。そんな九大生が存在していたとは!私はこの当時すでにだめライフ愛好会の活動を始めており、読書会もしていた。私は相手が理解のある人だと分かれば比較的すんなりと話せるたちで、それから色々な話しをした。ロックバンドの話しになり、GEZANを教えてもらったのもこの人からだった気がする。大学を卒業する前に立て看板を立てたいという話をしていた。当時は岸田政権による出入国管理法の改悪がなされた頃だった。だめライフ愛好会という活動をやっていることを打ち明け、中国の『寝そべり主義者宣言』を探していると話したら。その店員ははっとしたような顔をして徐にカウンターの中をあさりはじめ真っ黒いZINEを取り出した。そこには白い文字で"躺平主義者宣言"と書かれてあった。中国語で寝そべり主義者宣言という意味だ。それは店員の私物であり売り物ではなかったが、それをくれるというのだ。こんなことがあるのだと感動した。私は深く礼をした。All Books Consideredをとても気に入った。それから何度か足を運ぶようになり、半年ほど経って、もとのメンバーが何名か卒業して店を離れる関係で店員を新たに募集するという旨の投稿がInstagramに流れてきた。悩んだ末に応募する事にした。そして、今に至る。 なぜ洗面台の下にダリの肖像画が..
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