敗者のショートカットキー
ショートカットキーの存在意義は「よくある作業を省力化する」ことである。
しかし一口にショートカットキーと言っても、良いものと悪いものがある。
「別にショートカットキーなどなくても十分使えるが、その方が速いので使う」というのが良いショートカットキーだ(保存を押すのは簡単だが、Ctrl+S の方が速いからそうするというように)。
一方で世の中には、「元の UI が悪いのでショートカットキーを使わないとやってられない」というケースがしばしばある。こういうのを敗者のショートカットキーと呼んでいる。
たとえば CLIP STUDIO はテンキーにショートカットキーを割り当てて使う文化がよく見られるが、個人的にこれは後者の結果であると思う。
Adobe Photoshop も同様で、お絵かきツールは UI の複雑さをショートカットキーで何とかするような文化がある( 機能が多い上にそれらが正しく階層化がされない傾向にあり、結果として迷子になる )。
ちゃんと使ったことはないが Blender もそういう話をよく聞く。
Procreate はちゃんと UI をまともにする方向で作られてるので好ましい(そもそもタブレット用なのでショートカットキーに頼れないという面はあるだろうが)。
CUI 出身のツールも UI の悪さを解決するためにショートカットキーが使われがちであると思う。というか、ショートカットキーというのは CUI のための文化でそれが GUI にも持ち込まれたと言うべきなんだろうな。
「キーバインディング」というものは私には敗者のショートカットキーに感じられるし、シェルのカスタマイズを頑張るのも同様の理由で負けた気持ちになる。
ので、私は fish をデフォルトのままで使っているし、VSCode には基本カスタムキーバインディングを入れていない。vim や emacs に一切馴染めなかったのもこの辺が理由なのかもしれない。
CUI なんだからキーボードを活用するのは当たり前じゃないかという話ではあるが、CUI にもまともな階層構造とメタファーとしての UI というものが存在するはず。