音楽のインプットの方法について
最終更新 2022/04/15
Q.フロクロさんは今まで曲の分析や耳コピをどのくらいの時間・曲数行ってきましたか?
また、それらがフロクロさん自身の創作に役立ったなと実感した経験などはありますか?
自分も音楽を作ってみたい!と思いDTMもどきを始めて1年ほど経ちましたが、自分が今まで受け取って消化してきたものは"音楽っぽい何か"でしかなかったと思うほど、インプットからアウトプットに繋げられません。
作曲の分野でも編曲の分野でも、考えが空っぽすぎて自己嫌悪に陥ります。
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私自身、音楽のインスピレーションが脳内で無限に湧いてくる……みたいなタイプではなく、基本的に何もしてないとマジで何も思いつかない(そもそも思いついてもそれを保持できない)(しかも楽器も弾けないため鳴らして着想みたいなのもできない)のでインプットという行為それ自体がアウトプットの重要な過程の一つになっています。つまり、好きな曲を見つけたら、その曲を分析して好きな部分を知識として取り出して、それを繰り返すことで使える手札を増やす……というのが基本的な作曲の過程です。
なので、インプットが創作の役に立ったというより、インプットそれ自体が創作の一部であるというのが正しいかもしれません。良いものを作るためにはそもそも自分の中で何が「良い」と思えるのか知っておく必要があり、そのためにインプットが必要になってくる、という感じです。
結果として、普段音楽を聴きながら「これカッコよ!」「真似したい!」「今度取り入れてみよう」と思ったものをいちいちメモして、音楽上で実際に取り込んでみる、というのが私にとって制作の大部分をなしています。湧き出るものがない人間は外から何かを取り入れるしかない……というわけです。逆に、抜群のセンスがなくても大量の知識があればある程度は対抗できると考えています。もしくは、知識それ自体がセンスの正体です。
https://gyazo.com/7d0fa303f02f5a096e736d676dad57db
耳コピや曲の分析は手が空いたときにとりあえずやっているので、時間や曲数は(まだまだ足りてる感じがしませんが、それでも塵積(ちりつも)で)まあまあこなしている気がします。少なくとも1000時間とかではないはずです。今見たら、良かったコード進行をメモる音楽ファイル(2018〜)は2700小節(1時間15分)、コード進行の分析を整理するメモ帳(2020〜)は5万字ほどになってました。この辺も折りを見て整頓しつつ公開したいです。
ただ、たくさんコピーして分析して整理して……と考えると気が遠くなるので、インプットの仕方に迷った場合とりあえず好きなものを集めるというところから始めると効果的です。まず自分が何を「好き」と感じるのか把握するのが創作の第一歩で、そしてその私的な「好き」を大量に集めて作った作品は必ずオリジナルになるし、必ず作り手にとっても好きなものになるはずだからです。自分の好きなものを通して自分の輪郭を明らかにしていく作業です。ブルーピリオドの1巻でも夏休みの課題でやってましたが、美術だけでなく音楽でも効果あると思います。
https://gyazo.com/53ef2137f6faf0ad17c9c1c18c615ef3
記録方法はプレイリストでもメモ帳でもいいですが、まとめて見れるようにしておくのが良い気がします。そしてもし余裕があれば分析して、あるいはアイデアに困ったら上から聴いていく、みたいに使えればベストです。
以下、インプットをアウトプットにつなげるための方法についてメモします。
インプットにも色々段階があり、普通に聴くのもインプット、集中して聴くのもインプットですが、やはり最大のインプットはコピー(耳コピ)と、そこで得た知識を元にしたアウトプットということになると思います。アウトプットがインプットとはこれいかに、という感じですが、実際に使ってみることで知識が実感を伴って扱えるようになり、またアウトプットでさんざん苦しんで問題を浮き彫りにしてからインプットに戻ると「プロはこういうワザでここを解決してるのか……」みたいにそれまで気づかなかった発見が得られるようになるので、これらを往復することで初めて知識が色々使えるようになる、という体感があります。
インプットの段階
音楽のインプット(ここではコピー)にもいろいろあり、ざっくりと分類すると以下のような感じでしょうか。
メロディだけ、コードだけコピーする
音の鳴るリズム、長さ、ボイシングなど作曲的・楽譜的な部分までちゃんとコピーする
鳴ってる楽器など編曲的な部分までコピーする
ミックスまで再現して同じ音が鳴ってる状態に近づける
上に行くほど軽く、下に行くほど大変な作業になります。(私はミックスまでコピーするのはできた試しがありません。編曲も微妙です)
そして、下に行くほど得られる経験値が多く、上に行くほど少ない、とも言えます。
なので私は気になった曲はサクッとコードとメロディをとるくらいにとどめて、すごく気に入った曲、真似したい曲については編曲まで頑張ってコピーしてみる、と言った感じで分析をやってます。
https://youtu.be/zsuQoq8Dceo
↑恋は混沌の隷也の耳コピ(2019)
https://youtu.be/Nt05cKJ3USI
↑COOLISH WALKの耳コピ(2019)
https://youtu.be/dyWQJkf-U7w
↑シャーロック・シェリンフォードのテーマの耳コピ(2019)
振り返って初めて気づいたけど耳コピしてるのアニソンばっかりじゃないか……
アウトプットに応用する
コピーができたら、とりあえずメロディ以外はそのままで、メロディは変えてみる、あるいはメロディは残してコードを別の曲のものに変えてみる、などを試すとそれだけでひとつ小さなアウトプットになりますし、けっこう楽しいです。コピーする過程でなにか発見があったら、とりあえず速攻試してみるとその試作が案外いい形に結実したりもします。
インプットの助けになるもの
コードwiki
コードwikiに限らずコード譜系のサイトはめちゃくちゃ参考にしています。電車とかPCが開けない場面でも、聴いてる曲のコードが気になった際はとりあえず調べてコードを確認することが多いです。大抵のサイトに移調(キー変更)の機能がついているので、キーをCmajに設定して分析することが多いです(調弱者)。ただ実際に打ち込むと「ホントかこれ?」と思うこともままあるのでその場合は観念して自分で耳コピします。
MIDI
ジャズやクラシックの有名曲の場合、調べるとたいていMIDIが転がってます。あとゲーム音楽とか、90年代くらいまでのポップスとかでもMIDIがけっこうインターネットに置いてあります(YMOとか)。やはり他人の打ち込みデータを見るのはめちゃくちゃ参考になり、片っ端からDLしてずっと眺めてました。