メメントのレナード(環境に記憶を委託する)
210812
(クリストファー・ノーラン監督『メメント』を見返して)
記憶がない場合にどのように行動することができるのか、について考えてしまう。
記憶が持たない場合頼りにできるのは自らも含めた環境の情報だけで、例えば自分が今走ってる場合は「走っている」という情報が記憶外の記憶として作用する。つまり「何らかの原因によって自分は走っている」という情報が走っているというステータス自身に刻まれている。
それによる限界を突破するために主人公(レナード)が編み出したのがメモと写真、そして身体への入れ墨で、これはプログラムにおける変数に値する。
現在の環境情報の中にメモや写真といった変数を組み込むことによってレナードはより複雑な行動(ホテルに帰るなど)が可能になっている。「運転している」という環境情報(現在のステータス)とホテルの写真(変数による条件分岐)を組み合わせることでそれらが可能になるのだ。
ここまで書いて、実は普段我々が書いているプログラムはいわゆる人間が持っているような記憶を持っていないことに気づく。変数という環境の情報を過去の自分(コード)が操作することによって時間の中で異なる処理を実行することが可能になる。レナードはプログラム的に変数と環境情報を駆使して行動している。
この変数はプログラム同様「過去の自分の操作」に対する信頼に完全に依存しているため、この物語の冒頭、もとい結末はこの変数操作の悲劇であるとも言える。