「433over70kmプロジェクト」
433Mハンディトランシーバー同士の交信は、どちらかが山などの高所に移動するなら、70km以上の交信も難しいことではない。このような「見通し距離」での交信ではなく、「途中に障害物があり見通しがない 70km以上の交信」となると、その交信のハードルは途端に高くなる。これが「433over70kmプロジェクト」だ。
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「433MHz」ハンディトランシーバ(5W以下)と、
手持ちのアンテナ(5ele八木アンテナ以内)で、
どちらも車を使わずに行ける市街地(や郊外)から、
途中に障害物があり見通しが遮られた「70km以上の交信」に挑戦する。
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「433over70km」この挑戦に学生局や入門局が挑めること、実現可能であること
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「433over70km」交信を実現するためには、どのような交信方法があるだろうか
市街地での見通し交信距離は30kmほどだが、70km以上となると戦略が必要だ。いくつかの方法があるが、私たち(R16 Friendship Radio)が成功した交信方法を紹介したい。
「山岳回折伝搬」を活用した「433over70km」→ 筑波山
「山岳反射伝搬」を活用した「433over70km」→ 丹沢山塊
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「山岳回折伝搬」を活用した433over70km交信 →「筑波山」を選んだ理由
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山頂などの尖った部分に電波がぶつかると、電波は回折し山の背後に回り込み到達する。433Mで遠距離交信を可能とする山岳回折伝搬は、常置場所の無線設備があっての伝搬だと思われているが、ハンディー機同士の交信でも可能である。私たちは筑波山を選んだ。
筑波山(標高 877m)は二つのピークを持ち、M字型のユニークなフォルムは蛙(かえる)のようだ。筑波山は私の常置場所の埼玉県狭山市から、2時方向に75kmだ。「まさかシャックから筑波山が見えるとは」2階窓から筑波山が見えることを発見した時は感動した。アンテナが立つ屋根の高さからなら、もっと良く見えている。
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筑波山の背後となる茨城県水戸市に、ホイップアンテナのハンディ機で私の常置場所と交信できる地点がある。筑波山から2時方向に32km「大塚池公園」だ。赤塚駅より徒歩15分。池を一周する散策路の「呼鳥橋」近くの東岸になぜか狭山市からの信号が「S9」で入感する。林に隠せれ筑波山は見えないにもかかわらず、山頂で回折した信号が、北に連なる山々や水面に反射するからなのだろうか。
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「水戸市↔筑波山↔青梅市」433over70km交信(117km)2024/7/9
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この安定した交信ならハンディー機同士でも交信できるだろう。どうせなら狭山市よりも遠い地点から交信してみたい。「大塚池公園→筑波山→狭山市」の延長線上の地点なら、ハンディ機同士で交信できる地点があるだろう。(「延長線上」としたのには理由がある)
私の常置場所から見て筑波山は2時方向、真反対側となる8時方向延長線上に、Googleマップで実験に適した地点を見つけ出した。筑波山から8時方向に85km、東京都青梅市今井4丁目、青梅IC北側の見晴らしのいい畑の中、農道のT字路に立つ桜の老木が目印だ。金子駅より徒歩30分。
この想定に基づき交信実験を試みた。大塚池公園ポイントには私JN1GGZ(5Wハンディ・5ele八木)、桜ポイントには7L2AXY(5Wハンディ・5ele八木)。私の常置場所と重なる「筑波山パス 236°」は、筑波山(女体山)の標高850m付近を通過する。携帯電話で通話しながらアンテナを振ってお互いの信号を探す。予想とは異なり信号は、筑波山方向よりもやや西にずれた、加波山・難台山から入感した。その方向がわかると、117km離れているにもかかわらず安定した交信ができた。
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「山岳反射伝搬」を活用した433over70km交信 →「丹沢山塊」を選んだ理由
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山岳の回折伝搬交信は難易度が高い。対して反射伝搬交信は簡単だ。433Mの反射伝搬は山岳に限らず高層ビルの反射など、ハンディー機同士の交信も簡単だ。私たちは丹沢山塊を選んだ。狭山市の昭代橋から眺める丹沢山塊は、富士山の左側に停泊する船のようだ。
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山のかけらでさえ反射することに気づいたのは、2年半前の朝、狭山市から国道16号を南下し八王子バイパス相模原市緑区、橋本五差路手前の交差点で信号待ち。
「ただいま、八瀬大橋(川越市)通過中です」無線機から友人局の声が聞こえてきたのは、右矢印が出て右折レーンにいたバスが動いた直後だった。すると遠くまで見通せた。遠くにうっすら尖った山が見えた。丹沢山塊だった。丹沢の反射なのか・・・。
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「川越市 ↔ 丹沢山塊 ↔ ︎相模原市緑区」433over70km交信(75km)2024/5/26
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国道16号「橋本五差路」は交通の要所、日曜日朝なのに車や人の行き来は激しい。ハンドマイクを忘れた私は右手にハンディ機、左手に5ele八木を持ち、周りの目を気にしながらの運用だった。
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モービル機の出力でなくても、ハンディー機同士でも交信できるか、交信実験を試みた。国道16号「橋本五差路」手前、相模原緑区「南京亭 相模原橋本店」脇。丹沢山塊は雲に隠れるも蛭ヶ岳までは22kmと近く、国道の向こう側に見える位置だ。ここから埼玉県のハンディ局(所沢市・入間市・狭山市・川越市)4局と、何なりと交信できた。
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相模原緑区の国道16号の歩道から、JJ1HMQが立つ狭山市国道16号「市民会館入口」交差点につながる「昭代橋」歩道まで、直線では31km。直接波での交信できないが、丹沢山塊反射により交信できた。到達距離は70kmになるとしても。
この地で暮らす人たちはみな丹沢を知っている。この歩道から樹木の向こう側に丹沢の山並みが見えることを知っている人もいるだろう。だが「丹沢のかけら」でさえ、ここから70km以上離れた埼玉県まで電波を反射させ、交信を手助けする優しさを持つことを知る人はいないだろう。
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433over70km交信に挑戦するために「アンテナを作る」
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「ホイップアンテナより八木アンテナの方が、遠くの相手と交信ができる」誰でもが知ることだが、それを実際に体験できるのは楽しい。
数あるモノづくりの趣味の中でも、アマチュア無線でのモノづくりは、自作したモノを実際に試せることが有意な点だ。既成のアンテナはたくさんあるが、自作したアンテナで「433over70km」 交信に挑戦してほしい。
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433over70km交信に挑戦するために「自分なりの伝搬仮説を立て検証」
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筑波山→狭山市の延長線上の青梅市をポイントとしたのには理由があった。私の常置場所と重なる「筑波山パス 236°」は、女体山へ登山道沿いの最も高い無線中継塔(標高850m)を通過する。
この経路での伝搬が格段と強く、「山岳回折に加えこの無線中継塔も作用しているのでは」と考えていた。だがそうとも限らないようだ。
今回の水戸市「大塚池公園」では、信号は筑波山からではなく、北側に連なる加波山・難台山の方向からが強かった。さらなる伝搬仮説を考え始めたい。
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433over70km交信に挑戦するために「仮説・仕掛け・実験」
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430DXer局から聞いたことがあった。「HFに比べれば 430Mは、電離層を活かしたダイナミックな伝搬は期待できない。これは短所だろうか。違う、長所だ」「どうしたら交信距離を伸ばしていけるか。電離層の、いわば神頼みの伝搬ではなく、求められるのは『仮説・仕掛け・実験』に基づく伝搬なのだ」この「433over70km」交信も正にそれなのだ。
身の回りを観察し不思議に気づくこと。解くためにはどうしたらいいのか考える
今受信している信号が、どんなルートを通る伝搬なのか常に疑問を持つ
Google マップなどで地形を読み仮説を立て、仮説検証するための実験方法を考える
仮説検討や検証実験ではチームプレーが必要だ。無線仲間がいてこそ成り立つ
不思議なことを見つけにくくなった令和の時代だが、アマチュア無線では今もたくさんの「不思議と出会う」ことができる。交信することだけを無線の目的とするのではなく、無線をあえて「手段として活用」することにより、自らの「知的領土」を広げていきたい。
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de JN1GGZ(R16 Friendship Radio - JI1YUS)