夏への扉(感想)
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懐かしい匂いがした。本作はSF好きなら誰しもが読む超有名作品だ。タイトルから爽やかで想像できないような内容を想像していたが、ど真ん中の超王道SFであった。
SFは多くは読んでいないものの何となく感じる気配が、昔のSF感がする。それは訳し方なのかもしれないが。漢字にカタカナを当てる訳し方を見ると、どうも何となく古く感じるのは私だけだろうか。(現代SFをあまり読んだことがない)
例えば、スターウォーズの4を観た時のようなそんな感じがするのだ。公開当時の最新技術を用いた作品であることは想像できるが、現代と比べると映像は少し古くなってしまう。しかし、その映像が描くのは遠い未来の話だ。そんな印象を本作にも受けた。
ただそれは批判ではなく、私の場合はそういった雰囲気が好きだ。というのは、当時の未来の描写というのは夢やロマンが詰まっている。21世紀を生きる我々は、ある程度のハイテクを持ち合わせながらも、そんなことは出来ないであろうという気持ちが同居している。半ば諦めがあると思う。(少なくとも生きている間には無理だろうという気持ちがあるとは思う、特に時間旅行や、ロボットの世界というのは)そういったものが感じられない。未来は素晴らしい!という希望すら感じる。そういったあの年代らしさを感じると、生まれてはいない時代であるのに、古き良き時代感に想いを馳せずにはいられない。
内容は至って王道の時間を旅するSFだ。本当にど真ん中の話だと言っていい。但し、その時間を旅するまでに多少色んなことがある。多少では済まされないぐらい色んなことがある。その設定の緻密さやストーリーのおかげで主人公の成り行きが気になり、面白さが増してくる。本作の中の最初の時代であっても、(例えそれが1970年代であっても)現実の時代とは違うところも面白い。そこら辺も上述の懐かしさに繋がるのだと思うが。
21世紀に読む1950年代のSF小説だからこその良さもあるが、自分が1950年代に生き、これを読んでいたならば、もっとワクワクしたに違いない。
それでも、いつの日か本作のような未来が訪れる日があるかもしれないと夢を持ちたくなった。やはりSFはロマンの塊だ。