第8回:坂茂
https://scrapbox.io/files/640164dd6ac453001b4ca377.png
建築家の坂茂さんをお呼びし、これまでの建築作品と被災地での災害支援、そして「瀬戸内国際芸術祭2022」にて男木島で大岩オスカールさんと計画中のパビリオンについてお話しいただきました。
坂さんが災害支援を始めたきっかけとして、「建築家は社会の役に立っていないのではないか」という問題意識があったと言います。地震などの災害時に人間が被害を受ける直接的な原因が建築(の倒壊)だとしたら、被災地が復興するまでの劣悪な住環境を改善するのも建築家の仕事なのではないか。そういった思いで、世界中の被災地で災害支援を行うようになりました。
日本では、木材、鉄骨、コンクリートしか建築の主体構造として認められていないため、わざわざ自分の別荘として紙管を構造体とした建築を設計し、建設大臣認定を取ったと言います。2000年にドイツのハノーバーで開催された万国博覧会では、建築を解体した後にリサイクルできる材料を使用して日本館のパビリオンをつくりました。基礎もコンクリートではなく、木箱に砂を詰めて基礎としました。
災害支援としては、1995年の阪神淡路大震災で被災したベトナム難民のために仮設住居をつくりました。教会が全壊してキリスト像が屋外に祀られている状態だったため、紙管の教会を提案。初めは却下されたものの、毎週日曜日に教会に通っているうちに費用を建築側で負担するという条件で許可をもらい、10m×15mの紙管の教会を学生とともに5週間かけて建設しました。仮設としてつくられたものの日本で10年間使われ、台湾での地震に際してプイリーという都市に移設されて現在も使われています。
このような経験を踏まえて、仮設とパーマネントの違いは、みんなに愛されて使われ続けるかどうかだと言います。たとえコンクリート造で丈夫にできていてもすぐに壊されてしまう商業建築は「仮設」で、紙でつくられていても地域の住民に愛されて使われ続ければ「パーマネント」だと言える。これが坂さんの考える仮設とパーマネントの違いです。
瀬戸内国際芸術祭2022にて男木島で大岩オスカールさんと計画中のパビリオンでは、初めて紙管で和風建築に挑戦します。ガラスの引き戸がついているため、窓が締まっているときと窓が重なっているときで、大岩オスカールさんの作品の見え方が変化します。
[2022年5月31日、アートフロントギャラリー](文責:江尻)