第2回:平田オリザ
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劇作家・演出家の平田オリザさんをお呼びして、兵庫県豊岡市での活動を中心にお話しいただきました。
平田さんは劇団「青年団」を主宰し、こまばアゴラ劇場(東京)を拠点に活動されてきましたが、2015年から豊岡市内の旧・城崎大会議館を改修した「城崎国際アートセンター」の芸術監督を務め、その関わりのなかで2019年に兵庫県豊岡市へと拠点を移し、2020年より「豊岡演劇祭」を開催、2021年には豊岡市内に芸術文化と観光を中核に据えた兵庫県立の「芸術文化観光専門職大学」を開学し、その学長に就任しました。
「城崎国際アートセンター」(2015-)は、レジデンスに特化した国際アートセンターとしてパフォーミングアーツ(演劇やダンス)のカンパニーへの貸し出しを行ってきました。世界中からの申し込みがあり、年間330日も稼働する人気施設となりました。「城崎国際アートセンター」に滞在したアーティストはアウトリーチとして教育普及活動を行います。そのため、豊岡市ではアーティストと地元の子どもたちがともに作品をつくるようなイベントが毎月のように開催されています。「この町で世界と出会うことができる」と言います。
次に平田さんは、アジア初の本格的なフリンジ型国際演劇祭とも言える「豊岡演劇祭」(2019-)を開催します。フリンジ型とは、主要な劇場の周辺にある小規模な劇場で多数の公演が行われるような形式のことで、神鍋高原など豊岡市内の各所で演劇の公演が開催されました。また、演劇とダンスの実技が本格的に学べる日本初の公立大学である「芸術文化観光専門職大学」(2021-)を開設し、この刺激的な環境を求めて全国から学生が集まっています。若者のUターンやIターンを拒む原因として雇用や教育、文化の機会が少ないという問題が挙げられますが、豊岡市にはそれらが揃っています。面白い町、出会いのある町、戻ってきたくなる町をつくるためには文化が必要だと言います。
「城崎国際アートセンター」に関して、会場から「なぜこんなにも多くのアーティストが世界中から集まるのか」という質問があり、世界的にもパフォーミングアーツに特化したレジデンス施設は少なく、それゆえ人気なのではないかと言います。美術系のレジデンスにはそこに作品が残るという強みがあるのに対して、パフォーミングアーツ系のレジデンスには、制作場所のクレジットが入った状態で作品が世界中を回っていくという強みがあると言います。劇場はパフォーマンスを観る場所であると同時に、パフォーマンスをつくり、それによって交流が生まれる場所である。そのような意味で豊岡市での実践は、世界とつながっていくのです。
[2021年11月22日、アートフロントギャラリー](文責:江尻)