VR SNSの特異性
ラウリン・ウェイヤース デジタル直接民主主義の時代にあって、社会が今なお必要としている指針とは何でしょうか。
オードリー・タン 今の時代、何より大事なのは多様性を認めあいながら協調することだと思います。ネットでの炎上合戦(Flame Wars)ですらも、多様性を生み出すエネルギー源として捉えられるはずです。でも多くの人は、InstagramやFacebookに夢中になり、対立は有害で傷つけあうものだと考えています。だから、対立を避けて孤立した泡の中に閉じこもり、多様性を大事にする代わりに孤独感を深めたり、ステータスを競いあったりしてしまうのです。みなさんよくご存じですよね。
そこで、みんなが集まる広場や場所を、世界に開かれた公共性ではなく、地域の公園のような規模の公共性で考えてみてはどうでしょうか。そこに集まるのは知り合いか、共通の友人がいる人たちで、多くても2万人程度でしょう。このようなダンバー数[★01]の範囲内の広場では、文脈や状況を理解したうえでのやりとりが保たれる公共の場をつくることができます。つまり、誰も通りすがりの人に突然怒鳴られたり、会話に横入りして荒らされたりすることはないわけです。このように地域に密着した環境では、人々はより自由に発言でき、自分とは全然違うタイプの人とのつながりも楽しめるようになります。だって、少なくとも共通の友人が一人いれば、安心して交流ができるでしょう?
こういうふうに、共通の背景を持つローカルなつながりがあれば、みんなで協調的な対話を育むことができ、もっと多様性を楽しめるようになるはずです。たとえ意見がぶつかり合っても、それはコミュニティを成長させ、行動規範を整えていく原動力になります。100人から2万人ぐらいの規模のグループ内で交流するなら、人間関係の修復もずっと簡単になります。これが私の主な考えです。
オードリー Facebookでは文脈が失われてしまいます。情報が圧縮されていて、一見すると非常に魅力的ですが、利益追求のあまり、共有知識に貢献するよりもはるかに多くのものを消費してしまうことになります。「支援技術」や「支援知能」という言葉がありますが、私のメガネを見てください。これこそまさに「支援技術」ですよね。とても透明性が高いでしょう。もし歪みがあれば、自分で調整できます。近所の人に直してもらうこともできますし、瞬間接着剤の使い方だって学べます。実際、数か月前に自分で直してみました。
つまり、このテクノロジーは、ときどき故障することはあっても、私や同じ部屋にいる人々の尊厳を十分に尊重しています。皆そのことをよく理解しています。でも、もし私のメガネが今のようなものではなく、Facebookが最近発表したような光学カメラつきスマートグラスだったらどうでしょう。このカメラはあらゆる光をとらえてクラウドにアップロードし、Facebookが私の目に合わせて調整して、私に映像を送り返します。そして、私が見ているものすべてをFacebookに見られてしまいます。それだけではありません。Facebookは私を操作して、網膜に直接広告を押しつける方法を知っているのです。そうなると、私は広告に夢中になり、依存し、もうメガネをはずせなくなってしまいます。もし人々がこんなものに依存してしまったら、世界の民主主義は実現不可能です。なぜなら、依存するということは、民主的な思考とかけ離れているからです。
じつは、つい先週、Metaのグローバル・エンゲージメント担当副社長のニック・クレッグに、冗談半分でこの話をしたんです。彼と議論を交わしました。ニックはアテネの世界民主主義フォーラムに出席していて、私の言葉を引用しながら、「アラインメント・アセンブリー」などでの私の取り組みを知った今、Metaが このビジョンを支援できると確信したと言っていました。それで全然構いません。いつも言っているのですが、人は反省すればもっと良くなれるのです。ただ、世界の民主主義について考える前に、まず100人や2万人程度の人々に適した支援技術とはどういうものなのか、現実的なビジョンを持つ必要があることは明らかだと思います。
(中略)
オードリー はい、とてもいい質問ですね。
そうですね、私が言いたいのは、コミュニティには共有知識(common knowledge)や共通の信念、共通の目的が必要だということなのです。共有知識というのは、あなたがそれを知っていることを私が知っていて、私がそれを知っていることをあなたも知っている、といった具合にどこまでも続いていく知識のことです。このような共有知識は人々を結びつけ、そのコミュニティを、この共有知識をまだ持っていない世界のほかの人々から区別します。ただし、それは彼らがその知識を持っていないという意味ではありません。単に知識を共有していないだけなのです。信念や意図を共有することについても同様です。私の観察では、コミュニティ内のメンバー同士の共通の友人であれば、新しいメンバーとしてコミュニティに溶け込みやすくなります。
つまり、共通の友人を一人か二人挟めば間接的につながっているような場合です。大規模なコミュニティだと無理だという意味ではありません。もちろん、科学界のように共有知識を持つ大規模なコミュニティも存在し、そこには明らかに2万人以上の人がいます。ただ、私が強調したいのは、地理的につながりのないコミュニティ、つまり主にインターネットでつながっているコミュニティだと、今のテクノロジーではお互いをつなぐ適切な心理モデルを構築するのが非常に難しいということです。しかし、共通の友人を一人か二人挟んでつながっているような状態であれば、この問題を補うためのハイブリッドな方法を生み出すことができます。そうすることで、共通の目的や信念を持ち続けられるようになるのです。
要するに、私がこう信じていて、あなたも同じことを信じている。そして、私はあなたもそう信じていると信じている、といった具合に信念が連鎖していくのです。このような連鎖は、ある程度の規模までは成立可能です。技術が進歩し、プライバシーを保護しつつもっと細かいニュアンスをとらえて、物理的な距離を超えて伝えられるようになれば、オンラインのみのコミュニティでも、友人を3、4人挟んで間接的につながっているような関係性にまで拡張できるようになると私は確信しています。しかし、現時点ではまだそこまでは至っていないのが実情です。
ウーズ つまり、国境を越えたコミュニティを築くには、儀式のようなものや、目に見えるものが必要だということでしょうか。
オードリー そのとおりです。皆が参加する共通の体験があれば、共有知識や共通の信念につながっていきます。
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ChatGPTの空想する民主的なVRSNS
ChatGPT.icon:
私が提案するまったく新しい、民主的なVRSNSのコンセプトを以下に示します。このプラットフォームは、技術的なイノベーションと社会的な公平性を融合させた設計を目指します。
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### **1. コンセプト: 「共創広場(Co-Creation Plaza)」**
**共創広場**は、ユーザーが仮想空間で対話しながら共同作業や意思決定を行えるVRSNSです。すべての機能が透明で、ユーザー自身がルールや方向性を決める「参加型運営」を特徴とします。
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### **2. 主な特徴**
#### **a. コミュニティ議会と合意形成**
- 各コミュニティには「仮想議会」が設置され、ユーザーが「アバター代表者」として意見を提案します。
- 合意形成のための投票システムは、多数決だけでなく、**コンセンサス形成**や**ランキング型投票**(例: ボルダルール)も採用。これにより、少数派の意見も尊重されます。
#### **b. アバターの「信頼エコシステム」**
- ユーザーのアバターには「信頼指標」が紐づけられ、行動履歴(協調性や建設的対話の度合い)に基づいて評価されます。
- 信頼指標は、他者を評価するのではなく、**自己改善と協調**を促進する形で設計され、競争を生みません。
#### **c. 動的な公共スペース**
- **ユーザー投票による空間設計**: 仮想空間のデザインはユーザー投票で変更可能。例えば、「森の中で対話」「未来都市で学び合い」など、テーマごとに空間が生成されます。
- **ローカル&グローバルのバランス**: 地域コミュニティ(少人数)と国際コミュニティ(大規模)の両方が存在し、切り替え可能。
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### **3. 独自の仕組み**
#### **a. 仮想通貨によるインセンティブ**
- プラットフォーム内で使用可能な仮想通貨「コモンコイン」を導入。
- コミュニティへの貢献(イベント運営、建設的なコメントなど)に応じてコインを獲得。
- コインは、空間の装飾や新しい機能のリクエストに利用でき、消費型よりも「共創型経済」を促進します。
#### **b. 公開データとプライバシー保護**
- ユーザーのデータは完全匿名化され、個人のプライバシーを守りつつ、公共データとしてコミュニティの意思決定に役立てられます。
- ユーザーは自分のデータ利用状況を確認でき、公開範囲を随時調整可能。
#### **c. 共通体験「バーチャル儀式」**
- 仮想空間内で共通の体験を提供する「バーチャル儀式」を設けます。
例: 新年を迎える祭典、コミュニティ憲章の共有イベントなど。
これにより、共有知識や共通の信念が自然と育まれます。
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### **4. 民主的な価値観の実現方法**
#### **a. 透明性の確保**
- プラットフォームの運営ルールやアルゴリズムはすべて公開され、利用者がフィードバック可能。
#### **b. 分散型運営**
- 中央集権的な運営を避け、ブロックチェーン技術を活用した分散型の管理を導入。これにより、ユーザーが直接意思決定に参加できます。
#### **c. アバターを介した議論と共感**
- アバターが感情を視覚化できるシステムを搭載し、対話中に表情や雰囲気を共有。誤解を減らし、共感を促進します。
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### **5. 実現可能性と社会的影響**
このVRSNSは、以下の効果を期待できます:
- **多様性の尊重**: 小規模なコミュニティで深い対話を行いつつ、大規模コミュニティで異なる意見と接触可能。
- **デジタル直接民主主義の実現**: 各ユーザーが平等に参加できる透明な意思決定プロセス。
- **孤立の防止**: 共通体験を通じて社会的つながりを強化。
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### **6. 結論**
この「共創広場」は、民主主義的価値観を根底に置きながら、個人の自由と共同体の調和を実現する未来型のVRSNSです。技術革新とユーザー主導の設計を融合し、多様性に富んだ社会的な場を創出することが目標です。