Transformerってなんなん
#2025 #Gemini
今日の生成AIや対話型AIのベースとなっている「Transformer」モデルについて、専門知識がゼロの人でもわかりやすく理解できるように説明してください。
はい、承知いたしました。今日のAI、特にChatGPTやGeminiのような、人間と自然に会話したり文章を作ったりするAIの頭脳になっている「Transformer(トランスフォーマー)」という技術について、専門知識がまったくない方にもイメージしやすいように説明しますね。
Transformerってなに?を一言でいうと…
「文章全体の意味を理解するのが得意な、超優秀な翻訳家チーム」のようなものです。
もう少し詳しく説明しますね。
昔のAI(特に翻訳AIなど)は、文章を理解するとき、ちょっと不器用でした。
1. 昔のやり方(順番に読むスタイル):
文章を単語ごとに、最初から順番に読んでいきました。
「私」「は」「リンゴ」「を」「食べました」のように、一つずつ読んで、前の単語の意味を覚えながら次に進むイメージです。
これは、短い文なら良いのですが、長文になると最初の方の内容を忘れてしまったり、文全体の複雑な関係性を捉えるのが苦手でした。「彼が昨日話していた、あの赤い帽子をかぶった女性が持っていたカバンは…」のような文だと、どれがどれにかかっているのか混乱しやすかったのです。まるで、伝言ゲームで情報がどんどん変わってしまうような感じです。
そこで登場したのがTransformerです!
2. Transformerのやり方(全体を一気に見て、関係性を重視するスタイル):
Transformerは、文章を読むときに単語を順番に一つずつ見るのではなく、文全体の単語を「同時」に見ます。
そして、「この単語は、文中のどの単語と特に関係が深いかな?」というのを、まるで単語同士がお互いに注目し合うかのように分析します。これを「Attention(アテンション=注意、注目)」と呼びますが、これがTransformerの最大のキモです。
例えば、「その猫はテーブルの上の魚をそれで叩いた」という文があったとき、Transformerは「それ」が「猫の手(あるいは尻尾など)」を指している可能性が高いことや、「叩いた」という動詞が「猫」や「魚」と強く関係していることを、文全体の関係性から瞬時に理解しようとします。昔のやり方だと、「それ」が直前の「魚」を指していると勘違いしやすかったかもしれません。
この「Attention」の仕組みのおかげで、単語同士が文中で離れていても、その重要な関係性を見つけ出すことができます。これにより、長文でも文脈を正確に理解したり、より自然で人間らしい文章を作ったりできるようになったのです。
Transformerのすごいところまとめ
文脈理解がうまい: 文章全体の単語の関係性を見るので、複雑な文や長い文でも意味をしっかり捉えられる。
並列処理が得意: 単語を順番に処理するのではなく、ある程度まとめて処理できるので、計算が速い(たくさんの計算をする必要はありますが、同時に進めやすい)。
応用範囲が広い: 文章だけでなく、画像や音声など、様々なデータの関係性を捉えるのにも応用されている。
たとえるなら…
昔のAI: 一人で順番に本を読む人。読み進めると前のページの内容を忘れがち。
Transformer: 優秀なメンバーがたくさんいる読書チーム。みんなで本全体を広げて、「この部分はあそこと繋がってるね!」「この言葉はこの登場人物のことだね!」と、関係性を指摘しあいながら深く内容を理解していくイメージです。
このように、Transformerは「文全体の単語の関係性に注目する」という画期的な方法で、AIが人間のように言葉を深く理解し、自然な文章を作り出す能力を飛躍的に向上させました。これが、私たちが今使っている様々な生成AIや対話型AIの基盤となっている理由です。
少しはイメージが掴めたでしょうか?もし分からない点があれば、遠慮なく聞いてくださいね。
文脈理解を並列で行うことで従来モデルを凌駕する精度と速さを実現していることは理解しました。これを文章ではなく、画像や音声といったデータに応用する場合はどんな仕組みになっているのかをもう少し詳しく易しく教えてほしいです。
はい、承知いたしました。Transformerが文章だけでなく、画像や音声のようなデータにも応用される仕組みについて、さらに分かりやすく説明しますね。
基本的な考え方は、文章のときと同じ「データ全体を細かく見て、それぞれの部分が他の部分とどう関係しているか(Attention)を把握する」というものです。ただ、相手が文章ではないので、最初の「下ごしらえ」が変わってきます。
1. 画像への応用:まるで「画像の単語分割」
Transformerは元々、単語の並びである文章を扱うのが得意でした。では、1枚の絵である画像をどうやって「単語の並び」のように見せるのでしょうか?
ステップ1:画像を「パッチ」に分割する
まず、画像を小さな正方形の「パッチ」(切手やタイルのようなもの)に切り分けます。
例えば、猫の写真を縦横に碁盤の目のように区切って、たくさんの小さな画像(パッチ)にするイメージです。これで、1枚の大きな絵が、「パッチ1」「パッチ2」「パッチ3」…という「部品の集まり」に変わります。これが文章でいう「単語」のような役割をします。
ステップ2:各パッチを「数値の情報(トークン)」に変換する
それぞれのパッチがどんな絵柄なのか(色、形、模様など)をコンピュータが理解できるように、数値の集まり(専門的には「ベクトル」や「埋め込み表現」と言います)に変換します。
さらに、「このパッチは画像の左上の方にあったよ」「これは真ん中あたり」といった位置情報も加えます。文章で単語の順番が重要なように、画像でもパッチの場所は大切ですよね。
ステップ3:Transformerがパッチ同士の関係性を学習する
数値化されたパッチの情報がTransformerに入力されると、例の「Attention(注目)」メカニズムが活躍します。
Transformerは、画像全体のすべてのパッチ同士を見比べて、「猫の耳のパッチ」と「猫の目のパッチ」は強く関連しているな、とか、「背景の壁のパッチ」と「猫の体のパッチ」はこう隣り合っているな、といったパッチ間の空間的な関係性や意味的なつながりを学習します。
これにより、単にパッチをバラバラに見るのではなく、画像全体として「これは猫の顔だ」「これは車が走っている風景だ」と理解できるようになるのです。
何ができるようになる?
画像に何が写っているかを当てる(画像分類:「これは猫の写真です」)。
画像の中のどこに何があるかを見つける(物体検出:「ここに猫がいます、あそこに犬がいます」)。
文章で指示された通りの画像を生成する(画像生成AI:「夕焼けの空を飛ぶ青い鳥」の画像を作る)。
たとえるなら…
ジグソーパズルを解く名人を想像してください。
1. まず、たくさんのピース(=パッチ)を眺めます。
2. それぞれのピースの形や色、模様(=数値情報)と、だいたいどの辺りにありそうか(=位置情報)を把握します。
3. そして、「このピースの端の形は、あっちのピースと繋がりそうだぞ」「この模様は、あの模様の続きっぽいな」と、ピース同士の関係性(=Attention)を見抜いて、全体の絵を完成させていきます。Transformerもこれと似たようなことを画像に対して行っているのです。
2. 音声への応用:まるで「音の単語分割」
音声データも、画像と同じように「部品の集まり」としてTransformerに扱わせます。
ステップ1:音声を短い「フレーム」に区切る
連続した音声データを、非常に短い時間(例えば0.01秒とか)ごとに区切って、「フレーム」または「セグメント」と呼ばれる小さな音の断片にします。
「おはようございます」という音声があったら、「お」「は」「よ」「う」「ご」「ざ」「い」「ま」「す」といった音の響きに近い、もっと細切れの音の部品の集まりにするイメージです。これが文章でいう「単語」のような役割を果たします。
ステップ2:各フレームを「数値の情報(トークン)」に変換する
それぞれの音声フレームがどんな音の高さや強さ、響きを持っているか(音響的特徴)を数値の集まりに変換します。
そして、ここでも**時間の順番(位置情報)**は非常に重要なので、その情報も加えます。
ステップ3:Transformerがフレーム同士の関係性を学習する
数値化された音声フレームの情報がTransformerに入力されると、「Attention」メカニズムが働きます。
Transformerは、音声全体のすべてのフレーム同士を見比べて、「この音のフレームの次にあの音のフレームが来ると、こういう音節になりそうだ」「このトーンの変化は疑問を表しているな」といった、時間的なつながりや意味的な関係性を学習します。
例えば、「おはよう」という音声を理解するとき、単に「お」「は」「よ」「う」という音の断片としてだけでなく、それらが連続することで意味を持つ一つの言葉として捉えることができます。
何ができるようになる?
話された言葉を文字に起こす(音声認識:「おはよう」と聞き取って文字にする)。
誰が話しているかを識別する(話者認識:「これはAさんの声です」)。
音声から感情を読み取る(感情認識:「この声は喜んでいるようです」)。
テキストから自然な音声を合成する(音声合成AI:「『こんにちは』と自然に話す」)。
たとえるなら…
音楽のメロディーを聞き取る名人を想像してください。
1. 楽譜の音符一つ一つ(=フレーム)を細かく見ます。
2. それぞれの音符の高さや長さ(=数値情報)と、それが曲のどの部分にあるか(=時間情報)を把握します。
3. そして、「この音の流れは、あのメロディーの一部だな」「この和音は次にこう展開しそうだ」と、音符同士の関係性(=Attention)を理解して、曲全体を把握したり、次の音を予測したりします。Transformerも音声データに対して似たような処理をしています。
まとめ
このように、Transformerは、
1. データを適切な「部品」に分割する(画像ならパッチ、音声ならフレーム)。
2. それぞれの部品を数値情報(位置情報も含む)に変換する。
3. 「Attention」という仕組みで、部品同士のあらゆる関係性を見つけ出し、データ全体の文脈や構造を理解する。
という手順で、文章だけでなく画像や音声といった多様なデータも扱えるようになっています。この「関係性に着目する」という柔軟なアプローチが、Transformerの大きな強みなのです。
わかりやすい説明ありがとうございます。素朴な疑問なのですが、Transformerを含めた機械学習モデルは具体的にどのようにデータを学習して、正解のデータを出力する精度をあげているのでしょうか。私達利用者は任意のデータを入力し、比較的高速に望ましい出力を得られていますが、この精度や速度に至るまでに学習というフェーズを経たと思います。こちらもわかりやすく説明してほしいです。
はい、もちろんです! 機械学習モデル(Transformerも含まれます)が、どうやって「学習」して賢くなっていくのか、そのプロセスを分かりやすく説明しますね。
私たちがAIを使うとき、質問を入力するとすぐに賢い答えが返ってきて驚きますよね。でも、その裏側では、AIはまるで**膨大な量の「勉強」**をして、その能力を身につけているんです。
学習を一言でいうと…
「たくさんの『お手本(問題と正解のセット)』を見て、たくさん間違えながら、『どうすればもっと正解に近づけるか?』をひたすら考えて、自分の『考え方のクセ』を少しずつ修正していく作業」です。
これを、もう少しステップに分けて見てみましょう。まるで、生徒が先生から教わりながら勉強する様子を想像してみてください。
学習に必要なもの
1. 大量の「お手本データセット」:
これは、先生が使う教科書や問題集のようなものです。
たくさんの「入力例(問題)」と、それに対応する「正解例(答え)」のペアが含まれています。(例:「この英語の文」→「この日本語の翻訳が正解」、「この猫の画像」→「『猫』というラベルが正解」)
データが多ければ多いほど、AIはいろいろなパターンを学べます。
2. 「まっさらなモデル」:
最初、AIモデルは何も知らない生徒のような状態です。内部にはたくさんの調整可能な「考え方のコツ」(専門用語で「パラメータ」と言います)がありますが、最初は適当な値になっています。
3. 「学習ルール」(どうやって間違いから学ぶか):
どうやってモデルの間違いを指摘し、どうやって修正していくかの指導方法です。これには「間違い度チェック係(損失関数)」と「修正方法(最適化アルゴリズム)」が含まれます。
学習のステップ
AIの学習は、基本的に以下のサイクルをひたすら繰り返します。
1. 【やってみる】モデルが問題を解いてみる(推論)
生徒が問題集の問題を解くように、モデルがお手本データセットから「入力例(問題)」を受け取り、現在の自分の「考え方のコツ(パラメータ)」を使って、とりあえず「答え(予測)」を出してみます。
最初は、的外れな答えや、まったく違う答えを出してしまうことがほとんどです。
2. 【答え合わせ】正解と比べて、どれくらい間違えたかチェック(損失計算)
先生が採点するように、モデルが出した「答え(予測)」と、お手本データにある「正解例」を比べます。
「間違い度チェック係(損失関数)」が、どれくらい正解からズレているか、間違いの大きさを具体的な「点数(損失スコア)」で計算します。間違いが大きいほど、この点数は高くなります。
3. 【反省・修正】どうすれば間違いが減るか考えて、考え方を少し変える(パラメータ更新/最適化)
ここが一番重要です! 先生が「ここがこう間違っていたから、次はこう考えてみよう」とアドバイスするように、「修正方法(最適化アルゴリズム)」が、先ほどの「間違い度(損失スコア)」をできるだけ小さくするためには、モデル内部のたくさんの「考え方のコツ(パラメータ)」をどちらの方向に、どれくらい調整すれば良いかを計算します。
そして、計算結果に基づいて、パラメータの値をほんの少しだけ修正します。「この考え方はもっと重視しよう」「こっちの考え方は少し抑えよう」といった微調整です。ポイントは、間違いが一番減るであろう方向に、少しずつ修正していくことです(※)。
(※ これはよく「山の谷底(=間違いが一番少ない場所)に向かって、一番傾斜が急な方向に少しずつ下りていく」様子に例えられ、「勾配降下法」という考え方がベースになっています。)
4. 【ひたすら繰り返す】
この「やってみる → 答え合わせ → 反省・修正」のサイクルを、別のお手本データ(問題)を使って、何百万回、何千万回、場合によってはそれ以上、気が遠くなるほど繰り返します。
精度が上がっていく仕組み
この反復学習を通じて、モデルは膨大な量のデータからパターンやルールを学び取ります。
間違いを繰り返しながら、そのたびに「考え方のコツ(パラメータ)」を微調整していくことで、モデルは徐々に、様々な入力に対してより正解に近い答えを出せるようになっていきます。
たくさんの問題を解いて経験を積んだ生徒が、難しい問題も解けるようになるのと同じです。
じゃあ、なぜ私たちが使うときは速いの?
この時間のかかる大変な「学習(勉強)」プロセスは、AIの開発者たちが事前に済ませてくれています。高性能なコンピュータを使って、何日も、何週間もかけて学習させます。
私たちが普段AIを使うときは、すでに十分に賢くなった(学習済みの)モデルを利用しています。この賢くなったモデルは、学習で身につけた最適な「考え方のコツ(パラメータ)」を使って、入力された情報(質問など)に対する答えを計算して出力するだけなので、比較的高速に結果を得られるのです。例えるなら、難しい公式を導き出すのは大変でも、その公式を使って問題を解くのは速い、というのに似ています。
まとめると、AI(Transformer含む)は、大量のお手本データを使って「間違いから学ぶ」という地道なプロセスを膨大な回数繰り返すことで、徐々に賢くなり、高い精度を実現しています。私たちが手軽にその恩恵を受けられるのは、この大変な学習フェーズのおかげなんですね。
もととなった研究
Attention Is All You Need
Googleが2017年に出した論文。
Transformerとは・基礎知識を初心者向けにわかりやすく解説