蛇の道
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まず、一番最初に疑問に思ったのは、この作品、舞台フランスにする意味あんの?ってこと。逆に言えば「主役をそれでも柴咲コウにする意味あんの?」。助成金とかお金の関係ですか? 特にフランスにする意味ないと思う。
しかもリメイク前は哀川翔が主演だとか。柴咲コウ=アジア人、日本人の女性にすることで、なんかいろいろ意味変わってしまってる。
蛇の道。英語にするとSerpent' Pathなのだが、サーペントってキリスト教圏では「アダムとイブをそそのかすヘビ」を連想すると思うんだよね。そのヘビを「日本人の女性」にすることで、いろいろイメージが変わってしまってる。柴咲コウが往年のオノヨーコ(ドラゴンレディ)に似てるのでなおさら。 っていうか、この映画、どっちも黒幕というかトップが女性になってるので、悪い男性はたくさん出てくるものの、「そうです、ぜんぶ女にそそのかされちゃったんですー」って話になってしまってる。
柴咲コウのフランス語はうまいと思う。どうですかね、ネイティブの人。
個人的にはすっごい苦手な作風でした。いや、これを、というか「どこを」作家性と言ってみんな喜んでるのかはわかるけど、「おもろいやろ?」って言ってる監督の顔しか浮かばないので全然おもしろくなかったし、意味わかんないところも「オーディエンスに不親切な作風」って言えば言えるけど、そういうの全部「言い訳」だとも言えて。あとは作品の強度でどちらかが決まるんだけど、これは「言い訳」にしか思えなかったです。
全体的にサスペンスホラーのように見せて、どこまでもコミカル。シリアスなシーンでもふざけてるように見せる感じが持ち味なんだろうけど、それにしちゃあ「児童売買」「児童臓器売買」「児童ポルノ」という「そのためだけの設定」は後味悪すぎでしょ。
すべてを終えた柴咲コウが、停まってるベンツの横からチャリンコで走り出すところとか、監禁されてる男が落ちた食べ物を必死で拾って食べようとしている横で、柴咲コウが溶接してルシーンとか、おもしろいんでしょうけど、そんなんだから「ハイハイ」ってなってしまうんだよね。
二人目がさらわれるシーンあたりが一番おもしろかったかな。みんなでシリアスな復讐劇を演じてるのに「え?一体何でこんなことになってるの?」「どうしてそんなデタラメを??」って「おいおい、だいじょうぶかあ?」って感じになったときが一番笑える感じ。でも、これもオチは結局「ベタ」だったので、なんやねん!って感じ。
西島秀俊が出演している意味も謎。日本語シーンは聞き取れなかったので、何か意味あったのかもしれないが、なくても作品の強度にほとんど変化なかったと思う。
「どっちかわからない」でフラフラのまま先に進むのはある程度まではおもしろいけれど、そこも一定のわかりやすさがなければ単に「説明がヘタクソ」「自信がない」ことのエクスキューズでしかないと思う。たとえば「こいつ犯人?それとも善人?」とか「こいつ嘘ついてるの?それとも本当に知らないの?」とか、一個か二個ならそれでいいけれど、「どちらかわからない」の項目を増やすと2のn乗で視聴者はパターンを想定しつつ見なければならないから、その部分がものすごくストレス。必要な大どんでん返しとか伏線のために「どっち?」ってなるのはサービスだけど、そうじゃないゴチャゴチャは単に監督の「これくらいでええやろ」、甘えでしょ。
自分が「映画が嫌い」「一部の映画好きが嫌い」な理由がだいたい詰まってた、ある意味とっても見てよかった作品だと思う。