脳の性差
実際のところ、 脳は男女差であふれている。 まずは三つほど挙げてみよう。 男性の脳は女性の脳よりも大きい(その差は約一〇パーセントで、身体の大きさの平均的な差とほぼ同じだ)。 いっぽうで、女性のほうが脳の白質(脳の異なる領域を接続する配線の役割を果たす神経単位) が多く、 前頭前皮質も大きい。また、社会的に成熟する年齢は男女で異なるが、 脳も女性のほうが男性より早く大人になる。 白質の量の違いは脳の各領域の処理を統合する能力にも影響するため、女性のマルチタスク対処能力が高い理由はそこにあるのかもしれない。 また、女性のほうが異なる感覚がそれぞれ収集した情報をうまく統合できるのも、 そのせいかもしれない。そういった情報は脳の異なる部位で処理されるからだ。 だから女性は社会でも人を効果的に識別でき、 配偶者を選ぶときも相矛盾する基準に折り合いをつけて何らかのバランスを見つけることができるのかもしれない。 加えて、 脳画像研究から、 女性のほうが右側の前頭前皮質、 特に眼窩前頭皮質の容量が大きいことがわかっている――どちらも社会的情動反応やメンタライジング、 社会ネットワークのサイズに大きく関わっていると思われる脳領域だ(これは三章と六章で述べた)。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー・350ページ