獣害
さらにいえば、 かわいい動物、 という一般的表象は事実問題として打ち崩されてしまう。 なぜなら、 鳥獣害の問題は事実としてかなり深刻であり、動物愛護とか動物福祉といった言説がほとんど空虚に感じられてしまう現状があるからである。 たとえば、 日本でのシカ害は深刻であり、 シカ柵などいろいろと工夫はされているけれども、完全な解決にはなかなかならない (高槻 (2015) や祖田 (2016) 参照)。環境省の資料を引用しよう。「シカは、植物を食べる日本の在来種で、全国で分布を拡大し個体数が増加しています。 シカが増えるのは良いことと思うかもしれませんが、全国で生態系や農林業に及ぼす被害が深刻な状況となっています。 樹皮を食べられた木々が枯れ、 森林が衰退することで、そこをすみかとする多くの動植物に影響を与える例も見られます。 森林をはじめとする植生への影響が深刻な地域は、 尾瀬や南アルプスなど日本の生物多様性の屋台骨である国立公園にもおよんでいます」(「シカが日本の自然を食べつくす!?」 環境省 https://www.env.go.jp/nature/choju/ effort/ effort 8/about/ pdf/ meaning02.pdf 二〇二二年四月二七日閲覧)°現代思想2022年6月号 特集=肉食主義を考える——ヴィーガニズム・培養肉・動物の権利…人間-動物関係を再考する・人と動物をめぐる揺らぎと対等性についての一考察 一ノ瀬正樹244ページ