最果てから、徒歩5分
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死にたい思いを持った色んな人が自殺名所にあるオーベルジュに集まってくる。毎回、さまざまなお客がきて.....というアンソロジーがあり、その裏に、主要登場人物のお話があるのだが、後半から話がどんどん混沌としてくる。
後半、次々と謎が明かされるパートは正直盛り込みすぎて混乱気味で、メインの話ですら解決されてない伏線があったりとかで、まあ完全作とはとうてい言いにくいのだが、読者が物語や「登場人物」に「投影」するプロセス自体を、裏切る作風は、大好きだなあ。こういう毒がないと、気持ちいいきれいごとのままで終わってしまう。
ネタバレだが簡単にいうと、主要登場人物はみんな「いいひと」っぽかったが、全員実はとんでもない過去、ひどい行をしていたという。特にシェフの膳さんが印象的で、この人は、一家心中で亡くなった友人家族の遺児を預かって、娘として育ててる。この娘が実は膳さんのことが大好きで、告白しようとするのだが、膳さんはこの娘の母親と不倫していて、そのため、両親は一家心中するところまで追い詰められていたことが明かされる。
この娘が実は「父親」に「こうあってほしい」を勝手に投影していたわけだが、我々読者もまた膳さんに「いいひと」を勝手に投影して、勝手にガッカリさせられてるという構図。期待の投影 この「後味の悪さ」がこの人のコアなのかもしれない。他の作品も気になるので読んでみたい。 幸田すももという登場人物がいて、彼女は、ユココなる芸能人に憧れていて、そのユココの「現在」が記憶を失った「夕雨子」だと知り、一緒にいるのだが、実は夕雨子と思われていた女(表紙の女)は夕雨子の姉だった。
「誰」というのも結局、思い込みで成り立ってるよなーという。