2025/1/26
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歌舞伎に代表される町人娯楽は、時の政府=公儀から見れば"下らないもの"である。それは存在するけれども、それを"下らない"とするものにとってはなんの関係もない。関係ないものが存在することは、ただ「いたしかたない」というようなものであって、それを「より高尚であれ」などという干渉が生まれる訳もない。それを"芸術"と規定して"改良"を目指したのは明治以降の近代の話である。江戸の徳川政権にそ
日常が悪であってはならない。それが観客の属する世界の常識である。その日常に娯楽を提供する"非日常"の側は、だから当然この条件を呑む。呑んで黙って譲歩をして、そして黙って詐術を設けた。だから歌舞伎に「ドラマの起こらない日常は、果たして善か?」という問いかけは存在しないのである。「歌舞伎以降存在するすべての大衆娯楽に」と言うべきか。江戸にフランス革命を!橋本治pp.84-6