待ち時間に顧客を教育する
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鶏白湯そばの食べ方
1. 20秒以内に写真を撮りましょう
2. まずはレンゲで一杯ずつ乳化されたスープを体感せよ。
3. 特注中太麺のすすり心地ともちもち感を味わいください。
4. 卓上の味変アイテムで自分の好みに味を変化させてみてください。
5. スープが余ったら、ひとくちごはんに梅が入った「ダイブめし」を注文して残ったスープに入れ、最後の一滴までお召し上がりください。
とある鶏白湯ラーメン屋。ここのマーケティングがとても上手くて参考になった。まず、店員が全員女性。男性もいるにはいるらしいが、目に見えるスタッフは全員女性。この時点で女性にとって相当入りやすい。ロバート・B・チャルディーニによれば模倣は人に特定の行動をさせる原理のうちの1つであり、人間は自分と同じ属性の人間の行動を模倣しやすい。単に女性が多い場所ってだけで女性が入りやすくなる。 次に気になったのが、待ち時間の最中に配られたこのカード。「20秒以内に写真を撮れ」は上手い。インスタにアップしてね!と直接言ってもいいが、時間を区切ってやることを指定することで、希少性が生まれる。写真は撮っても撮らなくてもいいが、撮らなかった場合「写真が撮れたはずの最初の貴重な20秒」をみすみす何もせずに放棄したことになってしまう。写真を撮れば「せっかく撮ったのだから」とインスタにアップしたくなる。 次にそのインスタでどう投稿させるかだが、そのポイントを羅列してる。顧客にSNSに投稿させるときには、それとなく「どう書いたらいいか」を伝える。これは自分たちのためにもなるし、顧客には「有益な情報を他人に伝えたい」という欲がある。「乳化されたスープ」「中太麺」「すすり心地」「もちもち感」。キーワードを与えることでヴァイラルでのブレを少なくしている。 5も上手い。スープは余らせずにいただくものだという「教育」をしている。店としては廃棄が少ないほうが片付けもラクだし、コスト削減になる。また「スープが余ったら」という「条件が満たされたときにだけ購入できるスペシャルアイテム」を準備することで客単も上げる。単に「雑炊」などとせず「ダイブめし」などと呼ぶことで「ここでしか食べられない感」を演出している。女性客が多いのでボリュームではなく、「せっかくだから梅でサッパリしてみて?」「ひとくちサイズだから大丈夫!」を謳ってる。 ただ単に何もしなければ顧客にとっては「待つ」だけの何の価値もない時間だけど、紙を配るだけで、それは顧客にとっては商品についての「学習」時間となり、店にとってはクチコミづくりの時間、アップセリングの時間になる。 卓上にティッシュが一切ないのも、おもしろい工夫。ティッシュは便利だけど、女性がメインの顧客なら(95%以上女性だった)、ティッシュは基本的に持ってるだろうし、写真撮ったりする時にティッシュ箱はどかさないといけないのでむしろ邪魔。所帯染みてくるので一気に提供商品の価値が下がる。この店ではティッシュは提供せず、代わりに希望する客に紙エプロンを提供していた。そっちのほうが喜ばれるでしょ。
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おいしかったです。ちょっと単調でしょっぱいけど、途中の味変アイテムあるのもとてもよかった。
moriteppei.icon これ、「勝手な写真撮影への対応」としてもとてもおもしろい事例で。撮影するな!撮影するなら許可を取れ!ってのもいいけれど、あえてこちらから撮影タイミングや方法を指定すると「そうなのか」と教育されてくれる。まあ、飲食だからできることで、雑貨屋とかだと勝手な撮影、ウンザリだろうけど。