女が死ぬ
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表紙もすっごくよいし、著者のこともずっと、とても気になっていたので、心の底から楽しみに、期待して読んだけど、とにかく苦痛でしかなかった一冊。not for meと言えばその一言で済むが、じゃあ、聞きたい。本当に「女性」はこれが、こんなものが読みたいのか?
いろんな主題はあるが、メインをなすのはシャーリー・ジャクソン賞にもノミネートされたという表題作だろう。映画やエンタメのストーリーの進展のために、いろんな理由で死ぬ女たち。その不条理を連射していくわけだけど、本当に「連射」、つまりわんこそばで、食べたら同じものが次、食べたら同じものが次。わんに言葉が放り込まれるだけなので単調で、そうした短編、というか、短編よりも短いからショートショートだな。SFだったり突飛な設定、というか思いつき、ティンカーベルが21世紀にいたらとか、ハンドバックが死んで天国にいったらとか、そういうところから自由に書いた短いストーリーが次から次に出てくるだけで、それが別にそこまでおもしろくもなく、キレも悪いので「こんなんだったら星新一をもう一冊読むんだよ」「こんなんだったらモンティパイソン見直すんだよ」って気持ちになってしまった。
ただまあ「出会い方」なのかもしんない。雑誌や新聞のはじっこに、毎回これくらいのストーリーが、ささっと載っていたら、それはそれで「むふふ」としちゃう......のか?? 一冊の本として読む分には「なんだそりゃ」としか思わなかった。
たとえば「男性ならではの感性」。現代の世の中をひっくりかえし、男性が何かすると「男性ならではの感性」と言われ、「男だてらに」のように褒められ、ペニスの大きさをサイズで言われセクハラされ......といった世界のお話なんだけど、本当にそれだけだから本当に退屈。
これを読んで「いいぞ!もっと言ってやれ!」みたいになるんだろうか。
この人の本、というより、もう少し全般的な話になるのだけれど、昨今やたらフェミニズムやジェンダーをテーマにした本がたくさん出ており、それ自体は決して悪いことではなく、なんなら自分も気になって「ほしいものリスト」に入れるのだが、結果として「ほしいものリストに入れておくだけ」が最適解であり、実際買ったら退屈で読めず、読むと退屈でイライラする本が多い気がするのは、やっぱり私の気のせいもしくは女性を体系的に抑圧する性差別構造すなわち家父長制が原因でしょうか。
日本のクソ社会が悪いと言えばそれまでなのだけど、いつまで経っても同じような話が延々繰り返され、「まだ/またそこから?」という気持ちになるのに、他方で理論的な新化はそこでは見られず、階層性やセクシャリティなど、「ややこしい話」は透明化された上で、大多数の「女」の気持ちを「代弁」「代表」してるとされ、SNSでの共感を集めるというそれだけの本が多い気がして、しかし、本当にこんなのを当の女性は求めているのか? もっとおもしろい、性差別を扱ったものだけに限っても、そんな本はいくらでもあるんじゃないか?と思わされる。
ショートショートだからかなあ。文学的な味わいや快楽を求めて読むとほとんど一切そうした気持ちが得られないので、著者とその作品には非常に強い興味を持っているので、次は長編、といってもそこまで長くはないと思うけど、そんな作品にチャレンジしてみようかな。