友人関係における男女の性差
親しい人間関係に関するアンナマチンの研究では、ホモフィリー、すなわち同類性は、恋人関係にとっても同性の友人関係にとっても非常に重要だった。いっぽうユーモアのセンスは、 女性の親友同士の親密度を予測するには重要な因子だったが、 恋人同士の親密度に関しては男女ともにまったく関係なかった。 同様に、 身体的な魅力や運動神経も恋人同士の親密度には関係なかった。 女性の場合、 恋人同士の親密度に重要なのは、 (親友同士とは違い) 財力、 社交性、 信頼性、 優しさだった。 どうやら女性にとっては、性格、 地位やリソースに関する特徴、 相互援助、 興味、 共通の活動が何よりも大切らしい。 しかし男性の場合、 このような要素が恋人との親密度に影響することはまったくなく、 唯一影響がありそうなのは、パートナー側の協調性ぐらいだった。 男性の恋愛関係で、親密度に大きく影響していた唯一の要素は連絡をとる頻度だったが、これは男性の友人関係が概ね「去る者は日々に疎し」の精神に基づいた、あっさりしたものだからだろう。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 341ページ アンナ・マチンが行った友人関係についての研究を見た私たちは、 男性と女性では注目する基準がまったく違うことに気がついた。 女性の場合、 親友関係を予測するうえで最も重要な要素は、同様の教育レベル、 ユーモアセンス、信頼度、幸福度、 共通の活動の数、 相互の支援度で、 特に女性同士の親友であればデジタル的手段(電話、フェイスブック、 電子メールなど)での接触の頻度だった。 面白いことに共通の過去があることは、このような関係における親密度にはマイナスに働いた。 いっぽう男性の場合、 親友関係にとって重要なのは、その友情の継続期間、共通の過去、 相互支援の量、 共通の活動の数、そして財政状況の相似度 (パブで一杯やったり、 社交行事に一緒に参加したりする際に重要)、社交性、信頼性、 人脈の数だ。 ちなみにこの結果は、その親友が男性であっても、女性であっても変わらなかった。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 343ページ ここで気になるのが、この男女の違いだ。 これは、男性の友人関係における親密度が、 女性のそれとは大きく異なる力学に基づいていることを示している。 特に気になるのが、 共通の過去が親密さに及ぼす影響で、 共通の過去を過ごしたことが男性の友人関係にはプラスの効果を持つのに対し、 女性にとってはマイナス (共通の過去を強調すればするほど、 親密度は下がる)と正反対なのだ。 これは男性が集団的活動 (集団的活動は共通の過去の基盤になりやすく、クラブもその一つだ)を好み、 女性はより親密な二者関係 (一対一の関係では、今のお互いのことを知っているほうが、 共通の過去より重要だ) を好むことの表れかもしれない。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー ・ 343ページ こういった人間関係における基本的な力学の男女差は、 ジョイス・ベネンソンの研究からもよくわかる。 彼女の専門は友人関係の性質だが、 ここでは彼女が行った二つの研究が大きく関連してくる。 一つは、同性の友人二人に短時間、一緒にのんびりと過ごしてもらってから、 性差に偏りのないオンラインゲームをプレイしてもらうという実験だ。その結果、 男性は女性よりも、 ゲームをプレイする前に相手と近い距離でやり取りする時間が多く、ゲーム後も短時間の共同作業をする時間が多いことがわかった。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー・343ページ アンナ・マチンが入手した親友のサンプルによれば、 女性の九八パーセントは永遠の大親友がいると回答し、その八五パーセントは女性だと答えている。 このサンプルでは、男性の八五パーセントも誰かしらを親友として挙げているが(その七六パーセントは男性だ)、 それはたんに誰かの名を挙げるように求められたからにすぎず、女性たちの永遠の大親友とはまったくの別次元の親友だ。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー • 90ページ シラ・ガブリエルとウェンディ・ガードナーは成人の被験者たちに、自分自身についての一文 ( 「私は......だ」)を大量に書いてもらった。 すると、女性は他者との親密な関係を強調した文章が多かったが、男性は集団的側面(集団への帰属) を重視した文章が多かった。 また、 被験者たちに感動的な出来事について書かれた短い物語を読んでもらい、 その後で詳細について尋ねると、 女性は物語の人間関係に関する側面を思い出すことが多く、男性は集団的な側面を思い出すことが多かった。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 331ページ