ミゾロギー
----皆さん、なぜヨーロッパ人が反セム主義といって、ユダヤ人やアラブ人をあれほど生理的に嫌い、蛇蝎のごとく憎悪するか、ちょっとよくわからないでしょう。これはわれわれアジア人には少しピンとこない。私が院生のとき、或るフランス文学研究者が戸惑って、「これはヨーロッパの風土病みたいなものだから」と漏らすのを聞いたことがあります。しかし、私は思います。カントの言葉を借りれば、これは「ミゾロギー(Misologie)だと。これは「学問、理性、知識に対する憎悪」を意味します。つまり、圧倒的に知的に劣っていて、なおかつ膨大な知を与えられてしまった。知的な主体として「造られて」しまった。このことに対する知的な劣等感、なおかつまた嘘をついてまで、自らを騙してまで、自らの歴史を「修正」してまでその知的な劣等感を「無かったことにしたい」という欲望---反セム主義とはこ、これに根ざす憎悪なのです。ミゾロギー、知的な劣等感は、実は途方も無い暴力の惨禍を生み出しうる。このことを、決して忘れないでいただきたい。知的な劣等感や怨恨からものを言う人間を信じてはならない。仝(どう): selected lectures 2009-2014p.282