マッチングアプリにおける性差
女性たちが配偶者候補に求めるのは、富と地位 (指標となるのはいい仕事で、専門職についているか、たっぷりの預金がある男性が望ましい)、コミットメント(「愛情深い」、「ロマンチック」、 「寛容」、「浮気をしない」)、そして文化的関心 (音楽、 ダンス、読書、 旅行、 趣味、 政治観や宗教観) で、 これは一〇章で見た〈友情の七本柱〉 とよく似ている。 いっぽう男性のほうはと言えば、 自分はこういった要素を持っている、と女性に提示はするが、それを女性に求めることはほとんどない。 男性が年齢 (常に若いほうが人気だ) 以外で必ず指定してくるのは身体的魅力だが、 それについては、女性は必ず自分の広告の中で触れている ( 「小柄」、「魅力的」、「明るい」、 「美人」、 「おしゃれ」 など)。驚いたことに、 女性は男性の身体的魅力についてしょっちゅう口にしているにもかかわらず、 広告ではそれを相手に求める特徴として記さない。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 304ページ 私たちの研究グループで客員研究員だったボグスワフ・パウロウスキー (現在はヴロツワフ大学の教授で、 ポーランドの進化人類学の第一人者) に、 個人広告の分析は絶対に面白いプロジェクトになると持ち掛けたら、彼はすぐにとりかかってくれ、 その分析結果からは次のことがわかった。 まず、 男性も女性も異性がパートナーに何を求めているかをよくわかっているということ。 つまり、 異性が一般的に求める要素を自分がちゃんと持っていることを広告の中で明示しているのだ。 さらに彼らは恋愛市場における自分の年齢の相対的立場をわきまえているため、相手に対しては、自らに対する相対的需要にふさわしい要求をしている唯一例外がいるとすればそれは、恋愛市場における自分の立場を高く見積もりすぎている四〇歳から五〇歳の男性だけだ。まあ、これについては何も言わないでおこう。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 303ページ 年齢はおそらく、 女性の身体的魅力を代表する一番の要素であり、 男性は一様に特定の年齢層 (二〇代半ば)の女性を求める。いっぽう女性は、 自分より三歳から五歳上の男性を求めることが多い。 年齢と身体的魅力、それは女性の生殖能力を示す最もわかりやすい手がかりだ。 それとは対照的に、 男性の生殖能力は年齢には関係ないが、彼らの富は年齢とともに着実に増えていく(イギリスの国家統計による)。ボグスワフ・パウロウスキーと私は、男性の女性に対する関心 (特定の年齢層の女性で、 恋人募集広告を出している人数と、 男性が広告で求めているその年齢層の女性の数の比率に反映) は、 女性の自然な妊娠能力とほぼ直線的に相関し、二〇代半ばでピークを迎えるとその後は着実に低下していくことを明らかにした。 いっぽう女性が年配の男性を好むのは、男性が年齢を重ねながら蓄積した富と、年齢を重ねたことで上昇した死亡リスクの両方を考慮した結果の妥協点のように見える。 そこでイギリスの人口統計で見てみると、 たしかに女性たちは富と死亡リスクの最高のバランスを探しており、 三〇代半ばから終わりの男性が最も好まれることがわかった。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー・306ページ