ピーター・シンガー
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いったいシンガーがどんな仕事をしたために、こんなにも強烈な反応が引き起こされたのだろうか? 彼はたくさんの著作および文章において、障害児の一部は生まれたときに殺されるべきであり、特定の認知能力を欠いた重度知的障害者のなかには完全な人格とは認められないものたちもいると主張している。シンガーは障害をもって生きることにかんする生の質の判断を無数におこなってきたが、これらはきわめて問題だーー平均して障害者の「生は非障害者の生より生きる価値が小さい」ということを否認するのは、「現実を無視するような態度」だとシンガーは主張したのだ。「生きがいが少ない」という言葉によって、シンガーは障害者たちが生きる権利は非障害者よりも少ないとか、かれらの生は本質的に価値が低いということを言っているのではない。そうではなく、彼は障害者たちの生の質が低いと、すなわち障害者たちの生は健常者の生ほどには充ち足りたものでも、楽しいものでもないということを語っているのだ。それでもやはり多くの障害活動家は、シンガーの仕事のせいで彼本人のみならず、より大きな動物権運動に対しても不信感をもつようになったーーシンガーの考えの多くが動物権理論の土台にあると見なされたためだが、これは十分に理解できることだ。荷を引く獣たち スナウラ・テイラーp.209