ビデオチャットと対面での満足度が同じ
タチアナ・ヴラホヴィッチは、大学院で私の教え子だった当時、 ある調査を行った。 調査対象者たちに二週間、一日の終わりに親しい友人五人との交流すべてを記録してもらったのだ。 記録には、その交流に用いた手段とそのやりとりへの評価も標準的な社会心理学的幸福度 (あるいは満足度) に基づいて記してもらった。 交流に用いた手段は、対面、電話、スカイプ、インスタントメッセージ、 携帯メールあるいは電子メール (この最後のカテゴリーには、フェイスブックなどのSNSへの投稿も含む) に分類した。 するとこの調査結果は驚くべきものだった。対面あるいはスカイプを利用してのやりとりは、 その他の手段のどのやりとりよりもずっと満足度が高く楽しかったと評価されたが、それ以外の手段の間にはほとんど差がなかったのだ。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー・415ページ スカイプでのやりとりと対面でのやりとりの評価が同じだったという事実は、会話を楽しいものにするには二つの重要な要素があることを物語っている。 まず一つは、対面とスカイプにはほかの手段と違い、心理学者が「共在性」と呼ぶ感覚 同じ部屋に一緒にいるような感覚があるということ。 文字ベースの媒体はもちろん電話でさえ、距離感が生まることは避けられない。だが共在性は、キーボードを打つだけでは絶対に感じられない親密感を作り出すのだ。 二つ目の要素は、いわゆる 「フロー」 に関係している。 フローとは音楽から発した用語で、特に他者と一緒に演奏しているとき、音楽が自分の手から離れて勝手に奏でられていくように感じる状況をさす。 自分が演奏していたはずなのに、 気がついたら主導権は音楽のほうに移り、 メロディーが勝手に紡がれていくといった感覚だ。 会話には音楽性がある、と言われるのもそのせいで、それが一番よくわかるのが、 会話が流れるように次々と続いていくときだ。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 415ページ