パンとサーカス
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とんでもない作品なんだが......。
ベテラン作家が超ド直球を全力で投げてきた感じ。テーマも「今、日本語で一番書かなくちゃいけないこと」、つまり「腐った日本終わらせようぜ」で、小説家は小説書いてそれやるぜっていう。しかも、これ頭の先からしっぽの先まですべてアンコつまりまくった一大エンタメスペクタクルなんだから、なんというか。言葉失う。
しかし、その実、ここに書いてあることは「今の日本はこうですよね」でしかなかったりして、つまり創作なんだけど、島田雅彦、完全にこの小説で日本を変えようとしてきてる、その本気が伝わる一作。笙野頼子は「さあ、文学で戦争を止めよう」と言ったけれど、島田がここでやっているのはLet's change the world with the novel. 笙野の何百倍もマジって感じ。
これだけ人をたきつけあおっておきながら「でも、小説なんかただの妄想の垂れ流しなんだから罪に問えないでしょ?」って舌を出す。島田ってこんな人でしたっけ??? もっと「文学的」な人だと思っていたのだけど。
しかし、もっと恐ろしいのはこの小説よりも現代の日本はヤバくなってしまってることで......。小説の中では元自衛官の池上ってキャラが政府要人を暗殺するのだが、現実では元自衛官の山上が元首相の......。かるーく小説を超えてくる今の日本を変えるには、ではどうすべきか。島田と同じく、我々も自分たちの持っているもの、任された仕事の中で、一人ひとりが「マジになる」しかないんだろうな。まるで喜寿を迎えたストーンズが十代の頃大好きだったブルースをカバーしてアルバムつくっちゃいましたあ!みたいな、超ベテランにしか書けない大問題作。「味わい」には乏しいので、再読はしないと思うけど、絶対読んで損はない一冊。