ありがとう
それがよくわかるのが、オランダのナイメヘンにあるマックス・プランク心理言語学研究所の言語学者シメオン・フロイドとニック・エンフィールドたちの研究だ。 彼らは、感謝を表す表現がどのぐらいの頻度で使われ、人々は他者の親切にどのぐらい感謝の言葉を述べているかに興味を持った。 そこでこれを調べるために、 世界中(南アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、南アジア、オーストラリア)から集めた八つの言語による会話のデータベースを検索した。 彼らは、誰かが何かを依頼している会話を一五〇〇以上見つけ、その依頼が受け入れられたかどうかを判断し (約一〇〇〇件は受け入れられていた)、依頼者が感謝の言葉を述べているかを調べた。 すると、依頼者が「ありがとう」 またはそれと同等の感謝の言葉を口にしたのは平均で、 全体のわずか五・五パーセントだった。 イギリス人が最も感謝の言葉が多く (依頼の一四五パーセント)、 エクアドルの先住民族チャチ人が最も少なかった (○パーセント)。 この結果を見たフロイドたちは、 誰もが感謝の言葉を口にするというのはたんなる都市伝説で、少なくとも日常的な親切に関しては、人はそれほど頻繁に感謝の言葉を言っていないとの結論に達した。なぜ私たちは友だちをつくるのか ロビン・ダンバー 363ページ