D.I.Jのピストル
https://open.spotify.com/intl-ja/track/5s3AOuYjK1Oa65ZTbxgJjh?si=b28c602ceb8d44ec
https://gyazo.com/5d3195dc0e487ca45c73dc3a9249d8f9
ブランキージェットシティの代表曲。まず曲名を見て誰もが思うのは「D.I.Jって一体何なんだ」である。が、ネットやwikiで調べなくても、この曲を聞けば、この曲を聴いたほうが「D.I.J」のすべてがわかってしまう。そういう曲である。この曲で歌われていること以外にD.I.Jについて知るべき情報は一つもない。過不足がない。タイトルまんま、そこから1mmも照準が外れない歌詞がとにかくすごい。 そいつがあれば生きて行けると
Aメロすべてを使って、長くごちゃごちゃと歌っているが、一言で言うと「オレ」としか、そのオレはピストルなんだとしか言ってない。あとの言葉はすべて「オレ」の形容、修飾でしかないのだ。ブランキーのサウンドも疾走感溢れる素晴らしいものだが、歌詞のほうは実は結構ワンセンテンスが長くつづき、最後に一点に凝縮されていく。フレーズ、言葉の意味が切れずに、最後「ピストル」という体言止めでBANG!。一撃。長くダラダラとしてるからこそ、最後までリスナーを着地させない=言葉でも疾走感が出ている。 そのD.I.Jとは、部屋中にジェット機の写真を貼ってある日当たりのいいガレージの中にある傾いたベッドで裸でブーツだけ履いて眠る、「何かとっても悪いことがしたい」と思っている、メリーゴーランドのロバに向かって両手を広げて話しかけるようなやつ......って歌詞そのまんまを書いてしまうが、歌詞をそのまんま書くしかないくらい、ほんとにここには「D.I.J」の説明に一切過不足がない。
D.I.Jとんでもなくやべえな......。そう思いその情景を他人事で眺めていると、ラスト。D.I.Jがこちらをふり向く。全力で。
Baby そんなオレだけど愛してくれるかい
この、急にこちらに気づいて振り向くアクション、こちらを無関係のままにさせておかない、どころか、「愛してくれるかい」。最も深い関わりを求めてくる一行がとんでもなくやばい。リスナーはD.I.Jと「目があって」しまう。ここまで聴いてしまったからには逃げられないことに気づく。まさにD.I.Jのピストル=銃口が「見えて」しまうのである。
......とここまでカッコいい、ぶっ飛んだ世界観なのに、結局、「なぜ」D.I.Jなのかというと、
ドキドキするような イカれた 人生
の単なる頭文字なのだというのだからズッコケる。広末涼子のMajiでKoiする5秒前という歌があり、当時MK5なんて言われていたが、そのMK5、往年のアイドル広末と同じなのだ、D.I.Jは。 普通こういう世界観で、こういう歌詞なら、D.I.Jはなんか英語の略になるのが相場だろう。Die In Japanとか......だけど、そこで「日本語」から逃げない。どころか「日本語で何が悪い」「日本語だからかっこいい」と思わせる、ドメスティックなちゃめっけがあるからこそ、ただカッコいいだけでなく、「どこかおかしい」。そして「どこかおかしい」「なんかカッコがついてない」感じが、でもそのほうがカッコいい。ブランキーは「日本人」に「日本人」のままでカッコいいをつきつけてくるのである。