人工の砂浜
シルクスクリーン, 転写 / 紙, 布
シリコン, パステル, 木炭, 小櫃川河口の砂, エナメル加工皮革
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電車を降りたあと何十分も歩いて砂浜に行った。その道程にはたくさんの鳥の羽が落ちていたり、海が近づくにつれ道路沿いに貝殻が落ちていたりした。ようやく砂浜に着いた私は、落ちていたクラゲの死体に触ってしまい、怖くなって慌てて海水で手を洗った。その後もブヨブヨした落とし物を触ってしまった。高校時代に沖縄の砂浜に行ったときも魚の死体が打ち上げられており、それはあのサンゴが転がっている海岸の中でもひときわ異彩を放っていた。
砂浜って、命の循環の場所という感じがする。流木は死んでいる木、いくつもの貝殻、打ち上げられる肉体、……。
夕暮れ、だんだん暗くなっていくときの砂浜は思っていたような綺麗なだけの場所ではなく、ただその様子に呑み込まれるような気分になった。
リゾートで綺麗な夕日が沈んでゆく白い砂浜のある海岸も、死体とゴミが同じ場所に転がってブニブニしている薄暗い砂浜も、同じ海岸線上に存在している。そして、それらはどちらも人間の手によって作られた風景である。
砂浜の落とし物を拾ってみた。持ち帰ってみたら、急に生活に根づくありふれたものに見えた。
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前と同じ砂浜に行った。前よりも水量が少ない。しかも、前来たときよりも向こうに行ける。潮が引いている!
水面に鳥が浮かぶ。草の奥から聞いたことのない鳴き声が聞こえる。砂の表面にはいくつもの穴があいている。ああ、砂浜は、あらゆるものの終着点だと思っていたこの砂浜は、確かに生きている。あんなに周りにゴミが捨てられていても、砂や海水にビニールが混じっていても、この場所は生き続けている。
海の匂いがする。