樹状突起
樹状突起は周囲にある複数の神経細胞との接点を作るために、木の枝のように突起を伸ばしていきます。神経細胞同士の接点のことをシナプスと言います。樹状突起の表面には数千~数万ものシナプスが形成され、神経細胞同士の情報伝達をしているのです。つまり、樹状突起の表面積がシナプスの数に影響し、脳の働きに影響します。脳の健康のためには、いかに樹状突起がしっかり伸び、脳内にはりめぐらされるかがポイントだということになります。
しかし、年を取るにつれて脳の樹状突起は退縮し、シナプスも減っていきます。これが脳の老化の一因なのです。さまざまは病気によっても樹状突起は退縮します。脳の発達過程で樹状突起が大きく成長し、また、その形態がいつまでも維持されるためには、樹状突起の内側を支えている骨組みである微小管と呼ばれる繊維がたくさん作られ、そしていつまでも作り続けられる必要があります。微小管が作られる仕組みを解明することで、脳の老化予防や病気の治療につなげることができるのではないかと考えています。
では、なぜ脳は必要以上に多くの樹状突起の発達にエネルギーを費やすのでしょうか? 研究者らは、ニューロンの樹状突起が多ければ多いほど、適切な枝を正確に切り戻すための柔軟性が高まるのではないかと考えています。
「結果は、これらのニューロンの樹状突起ツリーを維持または保持するために重大な生物学的圧力が存在することを示唆しています」とゲージ氏は言います。
ニューロンの樹状突起の欠陥は、統合失調症、アルツハイマー病、てんかん、自閉症などの数多くの脳疾患に関連していると考えられています。 胎児の発育中と成人期の両方で、脳がこれらの枝をどのように形成するかをグラフ化することは、メンタルヘルスを理解する鍵となる可能性があります。
「これは再生医療にも大きな影響を及ぼします」とゴンサルベス氏は言う。 「脳のこの領域の細胞を新しい幹細胞に置き換えることはできるでしょうか。また、それらは同じように発達するでしょうか? まだ分かりません。」