カオス型整理法
記憶をすること、そしてそれを整理するには2つの方法があります。1つは、自分が面白いと思った知識を記憶し、整理するときの方法です。自分の関心のある知識だけを記憶するときのやり方は、まったく自分勝手な記憶法で構いません。他人からみると「何でそんなことを記憶しているの?」と思われるようなことを、なぜか記憶している。まさに頭の中がカオスのように雑多な知識でつながっているという意味で、これを「カオス型整理法」と呼ぶことにします。
もう1つは、すでに体系立っている知識を記憶し、整理するときの方法です。具体的に言えば、大学受験で世界史の試験があるから、世界史の本をまるまる1冊覚えるというケースで使う方法です。体系的な知識は秩序立っているので、秩序立った知識を記憶するには、覚えるしかありません。これを「秩序型整理法」と呼ぶことにします。
カオス型知識は、前章で説明してきたような秩序立った知識とは異なり、「とにかくすごい!」「面白い!」と直感で拾うものです。そう考えると、カオス的な知識は、面白ければ面白いほどいいという発想もできます。
自分にとっての「面白センサー」によってかき集めた知識を大量に記憶するとなると、そのセンサー自体が非常に重要な意味を持ってきます。学校の試験用の「秩序型」の記憶は苦手だった人でも、自分の好きなことを覚える「カオス型」の記憶が得意ということがあります。映画好きの人が誰も知らないマイナーな映画のスタッフを覚えていたり、鉄道好きが全国の駅名を覚えていたりしますよね。
知識」は外側にあるもので、誰でも共有できるものです。それに対して「経験」は個人的なもので、誰でも共有できるものではありません。しかし、その分、自分にとって「経験」は強いものであり、外側にある「知識」を自分の経験に引きつけて、自分の内側に取り込むことによって、記憶が定着しやすくなるのです。これが「カオス型」整理法の要諦です。
齋藤孝. 齋藤孝の 知の整理力 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.504-507). Kindle 版.