ジャンニーナ・チェンシ
《航空ダンス》は、トウ・シューズを履かず裸足で、マリネッティによる詩の朗読にのせ、繰り返されるオノマトペと飛行の爆音を思わせる音の高揚に合わせ、踊られた。両腕はプロペラのようにぐるぐると力強く回され、ときに両翼となって大きく広げられる。アラベスクのポジションやジャンプを多用し、まさに全身で飛行機そのものになりきっている。途中、片翼が折れ、減速し、最後には墜落してしまう。《瀕死の白鳥》さながらに、地に伏しておしまいとなる。この類似はおそらく偶然ではない。パブロワと同じくチェッケッティに師事し、チェンシ自身が《白鳥》という作品も創っていることから、飛行機が墜落して終わる演出と、白鳥が弱々しく羽を落とし伏せるあの終わり方とを意識的に、あるいは無意識的に、重ね合わせたのだろう。 https://www.repre.org/repre/vol7/images/yokota03.jpg