あいちサイエンスフェスティバル2021 サイエンストーク
愛知学長懇話会SDGs企画委員会「都市について、さまざまな側面から考えてみよう」
2021年10月7日 19:00-20:00 オンライン開催
神崎宣次(南山大学 国際教養学部)
専門:倫理学
今日の話の方向性
都市についての議論にもいろいろあります: 都市とは何かとか、都市社会学とか、都市生態学とか、都市計画とか
地理学、工学、食と農、経済学、心身のウェルビーイング、そして倫理学からの学際的アプローチによる研究プロジェクトを現在行っています
たとえば、都市を自動運転、AI、地理情報...などの各種技術が相互に関連する場としてみる
それらの技術が人びとの生活環境に浸透しており、切り離せないため、倫理的観点が必要
都市内の道路は生活空間もあるため、高速道路のように人と車の空間的分離が不可能
また、将来的に配送ロボットも歩道を含めた道路を移動するようになるかも
反面、歩行者の邪魔や危険にならないようにしなければならない
都市に住むステークホルダーは多様で、スラム住民など他の住民から存在がちゃんと見えていない場合もある。そうした多様なステークホルダーを特定し、都市の諸問題を総合的に検討するには多様な視点が必要
もちろん、ステークホルダー主導での取り組みも重要
見えていない問題と見えていない解決のチャンスの、どちらも都市は含んでいる
グローバルな都市化 Urbanization の傾向 (国連開発計画駐日代表事務所 n.d )
地球の総人口の過半数が都市部に居住。2050年までに65億人。
人口1,000万人を超える巨大都市圏も28 (2014年時点)
パンデミックの脅威にも直面
SDGs 目標11: 都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ安全にする
"As the pandemic response continues, countries and cities need to provide options for accessible, safe, reliable and sustainable public transport systems. Such systems should be well-integrated with walking and cycling paths through long-term policies, sustainable urban mobility plans and targeted investments." (United Nations 2021, 48)
"Adequate provision of streets, for example, also caters to pedestrians and cyclists and, combined with mixed developments, enhances the use of non-motorized transport. This is not only healthy for residents but can also reduce COVID-19 risks through less congested public transport systems." (United Nations 2021, 49)
"The share of the global urban area allocated to streets and open public spaces averages about 16 per cent, according to data from a sample of 911 cities from 114 countries in 2020. This is well below the UN-Habitat recommendation of 30 per cent streets and an additional 10 to 15 per cent open public spaces. " (United Nations 2021, 49)
都市と持続可能性
都市で持続可能性を達成すれば、地球全体の持続可能性への貢献が大きい
「都市は、地球の炭素排出量の70%を生み出し、世界のエネルギーの3分の2を消費しています。 ...都市部は、コンパクトで複合的な土地利用を採用することで、 1 人当たりの資源利用率と温室効果ガス排出量を削減できます。」(国連ハビタット 2020 , 4)
「適切に計画されたコンパクトな都市開発は、莫大な環境的価値を生み出します。資源効率が高いほど、エネルギー使用量は少なくなります。スプロール化による無秩序な土地消費を避けることは 、自然および農業地域を保護することにつながります。都市自体も、都市部の緑化を通じて生物多様性を促進することができます。 結局のところ、都市部は地球の陸地面積のわずか 2 % を占めるにすぎません。」(国連ハビタット 2020, 7)
都市のグリーン化、生物多様性、食料生産
公正な just 持続可能性でなければならない
都市における貧困、差別、不平等、排除、分断などの問題への取り組みも重要
単純な意味での平等な扱いだけでなく、アドヴォカシー advocacy が必要な場面も
包摂的 inclusive であること: 誰一人とり残さない。
「都市部では、先住民 、難民 、移民 、そしてアイデンティティや主義主張の異なる人々が共存しています。それぞれの集団は、時に対立、時に調和し、多様な価値を都市に見出すため、都市化の価値はそれぞれの集団に対応させる必要があるのです。」(国連ハビタット 2020, 7)
都市に浸透した技術とその倫理問題 (国連ハビタット 2020, 第6章)
IoTなどの活用による各種情報のモニタリング、監視 -> 環境負荷低減につながる
「都市には使えるビッグデータの山がある」
オープンデータ化 -> シビックテックなどによる活用、イノベーション
「グーグルマップの「エコフレンドリー・ルーティング」と呼ばれる機能では、人工知能(AI)を使い、混雑状況などから、最も二酸化炭素の排出量が少ないルートを教えてくれる。この機能により、排出量を年間で100万トン以上減らす可能性があるという。5日から米国で始め、来年には欧州でも導入する。日本は決まっていないが、「来年にはより多くの地域に広げる」という。...
ホテルの検索では、独立機関からエコ認証を受けているかどうかなども、わかるようになるという。
AIを使って、都市全体の信号機を効率よく運用する実験もスタートした。イスラエルの4カ所で実験を進めており、これまで燃料や遅延時間を10~20%減らすことができたという。これからリオデジャネイロで実験し、ほかの都市でも検討するという」(五十嵐 2021)
倫理的問題
プライバシーとセキュリティ
既存のデジタル・ディバイドや社会的不平等を深刻化させる可能性も
「遠隔学習の時代において、テクノロジーへのアクセスを確保することは今や公教育の重要な責任のひとつになっています。同時に、スマートフォン やインターネットにアクセスして調査に回答したり、自治体のサービスに登録することができない高齢者やホームレスといった人 々のために 、従来型の公共アウトリーチも必要です。」
テクノロジー主導型 -> 住民主導型へ
「都市はデータ収集と共有のための明確な倫理的枠組みと制度的取り決めを整備すべきである: これらのガバナンスの枠組みには、誰がデータ、アクセス、そして所有権を持ち、誰がデータからの利益を享受すべきかといった倫理基準の設定が必要です。」
これらの技術を稼動させるために生じる環境負荷は?
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