ポーター仮説
the Porter Hypothesis
伊藤康・浦島邦子 2013: ポーター仮説とグリーン・イノベーション ―適切にデザインされた環境インセンティブ環境規制の導入― . 科 学 技 術 動 向, 2013年3・4月号: 30-39.
このような環境規制は競争力を弱める、両者の間にはトレード・オフが存在するという「常識」・「通念」に対して、ハーバード大学の経営学者マイケル・ポーター教授は一石を投じた。Porter 1991において、「厳しい環境規制は、費用節減・品質向上につながる技術革新を刺激し、その結果他国に先駆けて環境規制を導入した国の企業は国際市場において他国企業に対して競争優位を得る」という主張がなされたのである。 ...
このポーターの主張は、元々は分量 1 ページの論文というよりは「記事」というべき記述において述べられたもので、議論を十分に尽くしたものとは言い難かったが、著者が非常に著名な研究者ということもあってか、その後この主張は度々引用され、「ポーター仮説」(Porter Hypothesis) と称せられるようになる。さらに経済学専門誌の Journal of Economic Perspective に掲載された Porter & van de Linde 1995 において、改めて同様の主張がなされた。そこでのポーターらの主張は、「適切に設計された環境規制は、それに対応するためのコストの一部あるいは全額以上を相殺するイノベーション(イノベーション・オフセット)を誘発する」というものである。...