さらに、「タダで読みたい人のために」
極私的参考文献
安原顕編『私の「本」整理術』メタローグ、1994年:
いろいろ参考になる。
なかでも、自分は丘沢静也のエッセイが好き。
「読みたい本をみんな買っていたら、財布がもたない。置き場所もない。」これに尽きる。
この厳然たる事実を突きつけられて、ぼくは自分の中途半端な蔵書状況が恥ずかしくなった。
(身の回りに、立派な蔵書家の先生が数々いるというのも大きい。)
とはいえ、所有しないで読書する、という境地に離陸するのはなかなかむずかしい。
ここでの丘沢の文章は、意識をもって読めば、買わないで読むための秘訣を汲むことができる。
読書に特化した本ではないが、橋本治的思考の中締め的書物であって、80年代から橋本治的思考を学びつづけてきた自分にとっては、読書の方法の面でも大いに示唆を受けた一冊。
「自分の身体は頭がいい」という結論は考えるところ大で、逐次メモを取って読書する方法を相対化する契機にも。
のち、他の著者[内田樹]が酷似のタイトル[『自分の身体は頭がいい』。よく見たら、全く同じだ]を付けた書物を2003年に出したが、このときはさすがに何だかなー、と思った。ちょっとしたフレーズなので著作権は微妙だけど、自分はファンダメンタルに橋本治主義者だったこともあって、さすがにどうかなと思った。
呉智英『読書家の新技術』朝日文庫、1987年:
20代の頃、熟読した1冊。
2017年現在では、いろいろ距離を感じるものになっている。
自分の総合的な境遇というものが大きく影響していると思う。
インターネットなど情報環境の変動というのも大きい。
(例えば、各本の書誌は、いちいち記録しておかなくても図書館やネット書店の検索で瞬時に入手できるが、昔はそれらを記録することが重要な仕事だった。)
それぞれの本は、それぞれの読み手にとっての旬があるのだろう。