blog of enjun
このディスクを初めて耳にしたのは、
深夜の吉祥寺、 ヴィレッジ・バンガードだった。
一瞬、山崎まさよし か、と思ったが、
なにかグニョグニョしたその感触に岡村の名前がすぐに蘇ってきた。
10年ほどまえの活躍期には
ラジオで聞く以外、まともに聞いたことのなかった岡村だが、
大音量でかかる新曲を聞いて、
あのこ ろと比べて何かが大きく変わっていることが伝わって きた。
山下達郎の「ヘロン」が出たとき、
その何ともいえない息苦しさに共感した。
岡村のこのディスクに対する感動もそれに通じるものがある。
すっきりしないことをまっとうに歌いあげること。
絵空事のようにさわやかな世界や、
逆に演技にしか映らない悲観的で絶望的な世界に安住することなく、歌うこと。
それがこの岡村の最大の魅力であり、
彼が歌わなければならないということ、そのものが姿を現している。
ことばがあのグニョグニョとした形で歌われなければならないこ と、
今はそれが一つの必然としてはっきりとわかる。
私は以前はそれをポーズとしてしかとらえてこなかったが、
彼にとっては最初から一貫してそうだったのかもしれない。
この新譜についての世間での評価はあまり聞かれない。
しかし、このすごさはいずれ世のなかにしみわたっていくことだろう。