面影島事件
日本の領海、太平洋に浮かぶ孤島、面影島を中心に世界規模のレネゲイド事件が発生した。それが"面影島事件"である。
なお、この1i件は世界で初めて、レネゲイドビーイング(という存在が確認され、大きく関与していたことが認められたものでもある。この事件に関わっていたとされるレネゲイドビーイングは、都築京香とオモイデ様の2体だとされている。
かつて日本FHのトップとして深謀遠慮を巡らせていた"プランナー"都築京香。この事件において、彼女の正体がレネゲイドビーイングの1体であることが判明した。
都築京香は、レネゲイドビーイングの中でも唯一、人間並み、いやそれ以上に明晰な自我と知性を持った特殊な存在である。
レネゲイドウィルスは、20年前の発見以前から世界に存在し、レネゲイドビーイングも存在した。部築京香は、その最初の1体と思われる存在であり、いつから存在していたかについては、本人すら完全には把握していない……と言われている。
20年より昔、レネゲイドウィルスが広がる前は、レネゲイドビーイングは不完全な個体ばかりだった。弱々しい知性しか持たないものか、知性はあれど長く存在できないもの、自律的な行動ができないものなど。人間のような意志を持ち、さらに独立行動ができる個体は彼女、都築京香のみという状態だった。
しかし、レネゲイドビーイングは、20年前の輸送機撃墜事件とそれにともなうレネゲイドの拡散以後、急激に数を増やしていた。また、古くから存在するレネゲイドビーイングたちも、ゆっくりとだが知性を伸ばし始めたのである。
都築京香は、この現象を「レネゲイドが人間を侵蝕し、その精神構造を理解しはじめたからである」と理解した。つまりレネゲイドは、人間を侵蝕することで進化すると推測したのだ。こう思うにいたって、彼女の"プラン"は、新しい局面に到達した。究極のレネゲイドともいえるレネゲイドビーイングの力を利用し、全人類をレネゲイドが"侵蝕"する。そこに、レネゲイドの未来がある、そう考えたのだ。
そのために、都築京香が目をつけたのが、面影島に存在するレネゲイドビーイング、"オモイデ様"と呼ばれる存在であった。
オモイデ様
オモイデ様はすべてのシンドロームの能力を持ち、面影島全体を"領域"とする強力なレネゲイドビーイングである。その本体は、面影島の地下に存在する、巨大な賢者の石だ。
そして、オモイデ様独自の特殊な能力が、人間の記憶を取り込み、その中に存在する死者を再構築する"黄泉還り"と呼ばれる現象である。都築京香は、この"黄泉還り"の能力を利用して、レネゲイドビーイングの進化を促すことを計画した。大規模な"黄泉還り"を発生させることで、大量の人間の記憶をオモイデ様に取り込ませ、それを共有させることで、すべてのレネゲイドビーイングをに進化させようと画策したのである。
"黄泉還り"
そして、都築京香の"プラン"によって世界規模の"黄泉還り"現象は発生した。これはオモイデ様と、とあるオーヴァードが共鳴したことが原因とされているが、くわしいことは分かっていない。
ただ確かなのは、世界中で一時的に死者が蘇るという複雑怪奇な現染が発生したことだ。本来ならばありえない"死者の蘇り現象"によって、日常の世界は壊れるかと思われたが、事件はわずか半日で収束。世界は無事に平穏を取り戻すことになった。
事件後のレネゲイドビーイング
面影島事件後も一見、世界は変わっていないように見える。
だが、それは上辺だけだ。変化は確かに起こっているのだ。それは世界各地で、レネゲイドビーイングがその数を増やし始めたことからも明らかである。
このレネゲイドビーイングと人類が、どのような関係を構築していくことになるかは、現在はまだ分からない。