中枢議会の設立〜コードウェル博士の帰還
中枢議会
中心となる人物を失ったUGNは、各国政府の介入をうけ、十二人の評議員からなる中枢評議会で意思決定が行なわれるようになる。各国支部での独立した行動が増えると共に、全体的な傾向として、オーヴァードの監視、犯罪への対処といった治安維持機能が強化されていった。この傾向は現在まで続いている。
この時からUGNは、一般人とオーヴァードの共存を唱えながらも、レネゲイドの存在を隠蔽することこそを最重視するという、矛盾を抱えるようになったのである。
依然、一般人とオーヴァードの共存を理念として掲げてはいるものの、その道を真の意味で模索できている支部は多くない。
日々起こる、レネゲイド関連事件への対処に追われるばかりで、目指すべき理想へいたる道は、いまだに見つかってはいない。
現在のUGNの在り方に疑問を持つ者も生まれ始める中、誰もが予想だにしなかった、そしてUGN全体を揺るがす大事件が起きる。
コードウェル博士の帰還
その事件は、ある冬の日に起こった。日本時間19時52分32秒。テレビ、ラジオ、インターネットなど、世界中ほぼすべてのメディアがひとりの男によってジャックされたのだ。
男は自らをアルフレッド・J・コードウェルと名乗り、「あなた方の日常は、すでに壊れている」と言い放った。そして、レネゲイドについて、UGNとFHの存在について語り、こう続けた―「自分はFHエージェントである。現在のUGNはその存在意義を失っているため、破壊する」と。そうして、メディアジャックは始まりと同様、唐突に終わった。
UGNと各国政府は、即座にメディアを封鎖。放送を中断させた。人為的に停電を発生させた地域すらあったが、しかし、あらゆるメディアを同時に封鎖することは不可能であり、それを見たものの手によりコピーされていった。UGNは総力を挙げて情報を隠蔽。オーヴァード能力によるハッキングや記憶操作を駆使し......そして必死の数週間後、世界はそれを、夢のようにうっすらとしか覚えていない。 それでも、消しきれなかった情報の、記憶の残滓は都市伝説として生き残った。
そして一般社会とは別に、UGN内部には強烈な衝撃が走った。死亡したとされていたUGN創始者の帰還―それも、FHの一員として。その言葉が嘘でない証拠に、コードウェル博士はみずからの手により、複数の大型支部を襲撃、壊滅させた。
UGN内部にあった不和や混乱は一気に広がり、離脱者も発生。組織的な混乱を収めるため、中枢評議員までが奔走することになった。
そしてコードウェル博士はなぜか、標的を日本と指定。その狙いは不明なまま、レネゲイドに関する"なにか"を日本で探している、という噂だけが流れている。