メモリー
ダブルクロスにおいて、人間を人間たらしめるのは本人の意志と、周囲の人間関係――口イスであることは承知のことと思う。ロイスを失いたくないが故にオーヴァードたちはレネゲイドの侵蝕に抗い、その理性を保っている。
だが人間はその意志と支えてくれるものの他に、大きな力にしているものがある。
それは"思い出"だ。
楽しかった思い出はストレスを軽減する効果があり、苦い思い出は大切な教訓となる。
特に自分ひとりではなく、他者と作りあげた思い出はいつまでも色あせることなくその心に留まり、自分自身を構成する大きな要素となる。
本書ではこの"大切な思い出"を「メモリー」としてルール化する。ロイスと共有してきた時間の結晶、もう変わらずに自分の心に留まるもの、それがメモリーである。
メモリーはPCをレネゲイドの侵蝕から護り、あなたを人間に留まらせてくれるだろう。
メモリーの効果
メモリーを持っているキャラクターは、バックトラックの際、ダイスロールを行なう直前に使用を宣言できる。
メモリーを使用するとそのキャラクターの侵蝕率は10%下がる。メモリーを複数持っていた場合、それらをまとめて使用してもよい。
例えばメモリーを3つ所持しているキャラクターは、バックトラックの際にすべてを使用して30%引き下げてもよいし、ひとつやふたつだけ使って10%、20%のみに留めてもよい。使わないことも選択できる。ただし、同じメモリーを1回のバックトラックで何度も使用することはできない。
メモリーはひとつにつき1シナリオに1回までのみ使用できる。また使用しても消えることはなく、次のセッションの際に使用できる。
メモリーの取得
メモリーは経験点15点を消費して取得する。なおこの処理はメインプレイ中には実行できず、プリプレイにのみ行える。
取得の際は、メモリーの対象となるキャラクターを決めること。そのキャラクターとの思い出が、あなたの力になるというわけだ。対象が決まったら、本書掲載のキャラクターシート(カバー裏)、およびレコードシートのメモリー欄に書き込むこと。
次にそのメモリーに対する感情をひとつ決めること。感情表の中からひとつを選択し、同じくメモリー欄に書き込むこと。なお、選択する感情はポジティブ、ネガティブのどちらか一方である。これはロイスのように関係が変化しない、文字通りの"思い出"であることを意味している。
メモリーは1キャラクターにつき、最大3つまで取得できる。
メモリーの変化
メモリーはロイスがタイタスになるように、劇的な変化は起こさない。それはすでに固定化された思い出だからだ。
だが同じ思い出であったとしても、自分自身の印象が変わることはある。プレイヤーは望むのならば、そのメモリーに対する感情を変更することができる。この処理はいつでも可能だが、GMの許可を得ること。
メモリーの消去
メモリーはプレイヤーの任意で消去できる。ただし、この処理はメインプレイの最中には行なえない。
メモリーを消去しても消費した経験点は戻って来ない。注意すること。
メモリーとロイス
メモリーを取得したキャラクターは、そのメモリーの対象にロイスを結べなくなる。これは「ロイスとの関係性が固定化され、思い出となった」ことを意味するからだ。
ただしGMが認めればメモリーの対象にロイスを結んでもよい。
取得の注意点
上記のように、メモリーを取得するということは対象との関係性を固定してしまう。裏を返せば、関係性がたゆたっているが故の楽しみを失ってしまうということだ。
例えばオーヴァードではない友人に、自分の正体がばれるかどうか、ばれたらどうなってしまうのか、というような関係を一足飛びにメモリーにしてしまうと、その友人を中心とした日常と非日常の物語は楽しめなくなってしまうのだ。
逆に、前回のセッションで互いの本心を知り、理解したキャラクターをメモリーにすることは問題無いだろう。
ロイスよりも関係性に融通が利かず、だからこそ自分を保つ力となる。それがメモリーなのだ。プレイヤー諸氏は取得する際に十分注意をし、GMと相談してほしい。
取得推奨の例
それでは以下に、どのようなキャラクターにメモリーを取るのがふさわしいか。その推奨となる例をいくつか紹介しよう。ただし、これらはあくまでも推奨であり、例である。実際に取得する際にはGMと相談し、決定すること。
PCに取得する
たとえば兄弟である、上司と部下であるなど、すでに関係性が決まっているPCに取得する。取得の際には具体的にどういう思い出が、どういう感情につながったのかを話し合って決めるとよい。
さらに可能であれば、1~2回同じセッションで卓を共にし、相手との共通した思い出ができてから取るとよいだろう。逆に初顔合わせ、特にPCとしても顔を合わせたばかりのキャラクターには取るべきではない。
過去のNPCに対して取得する
たとえばキャンペーン最中、すでにクリア済みのシナリオのNPCに取得するなどである。物語が終わり、関係性が固まった後にその記念として取得し、いつでもロールプレイに活かせるようにするという取り方だ。
たとえば「前回のセッションで心を通わせた少女」や、「お互いわかり合ったライバル」などがこのケースにあたる。
自分の設定として取得する
これは自分の過去設定を決め、その対象に取るというケースだ。この場合、ロイスのようにたゆたったものではなく、「終わったもの」として設定する方がよいだろう。
たとえば「もう会うことはないが、道を示してくれた恩師」や、「復讐が終わった後の敵」などがふさわしい。
メモリーに対する制限
GMはメモリーの取得、及びその効果を制限してもよい。
たとえば「このキャラクターはメモリーの対象として欲しくない」というケースならば、それを宣言しても良いし、プレイヤーが取ろうとした時に却下してもよい。
また、Eロイスの効果などによって「このメモリーは今回使用できない」などとしてもよい。
ただしメモリーそのものを消去することはできないものとする。一時的に使用できないとしても、必ず思い出は再び浮かび上がってくるものなのだ。
メモリー取得後の関係変化
たとえば、自分は「世話になった恩師」としてメモリーを取ったのに、それが実はだまされていたことがわかったとする。その場合、メモリーはどうするのがふさわしいのか。
これは最終的な判断はGMに任せるものとする。メモリーとしては機能する、としてもよいし、その場でメモリーを消去するとしてもよい。
ただ、どんな場合でもGM側からメモリーの消去を指定する場合、取得に消費した経験点は払い戻しにすること。
またこのようにメモリー取得後に関係が変化してしまった場合、GMはアフタープレイ時にメモリーの感情を変えるなどを認めてやるとよいだろう。