シナリオ作成について
GMにとって、もっとも労力が必要だと思われるもの、それがシナリオの作成である。ここでは、簡単にシナリオを作成する際の注意点について解説してみたい。
ボスキャラクター
最初に考えるとよいのは、シナリオを通じて、倒す必要のある敵、ボスキャラクターである。多くはPCと対立する目的(それも多くの被害を出すような)を持つオーヴァードだろう。
まずは何故PCがそのボスと敵対することになるのかという理由から考えてみるといい。または、そのボスが引き起こす事件から考えてみてもいいだろう。
いずれにせよ、ボスはPCを始めとした人々に危害を加える存在である。そうでないならば、PCとボスとが戦う理由はなくなり、『DX3rd』の物語(セッション)は始まらないだろう。 ボスの目的は次のようなものが代表的だと思われる。これらの目的は単独ではなく、複数が絡み合っているかも知れない。
・大量(特定)のオーヴァードを生み出す/捕獲する
・大きな破壊を生み出す
・危険性の高い、レネゲイドがらみの実験を行なう
・邪魔な個人/組織を排除する
・PC、またはヒロイン(後述)から何かを奪う
・PC、またはヒロイン(後述)を殺す/利用する
護るべき者―ヒロインー
ヒロインとは別に美少女のNPCを指しているわけではない。ここでいうヒロインとはヒーローであるPCが守るべきものの象徴である。ヒロインの存在が重要である部分はまさにここである。PCたちは命をかけて戦うわけなのだから、そこには理由が必要になるのだ。ヒロインとはその理由そのものである。PCと会話し、交流することでPCたちの命をかける理由"を補強する。そのために、NPCであることが多いのだ。
オープニング
続いて、PCたちがなぜヒロインと関係し、ボスキャラクターと戦うのか、その切っ掛けとなるオープニングについて考えてみよう。
オープニングはいくつかのパターンに分けることができる。
ヒロイン
守るべき存在との交歓(ロイスとしてヒロインを提示する)、ヒロインが敵に脅かされることがPCの動機となる。
エネミー
敵(ボスとは限らない)とPCが因縁(ロイスとして敵を提示する)を持っている。敵討ちや好敵手、かつての友人、師匠、兄弟弟子などが基本となる。
他のPC
他のPCを追う、助ける、以前からの相棒などの関係を持ち、ペアとして活動する(ロイスとして他のPCを提示する)。キャンペーンプレイの場合にさらに有効となる。
依頼
PCが所属している組織や個人的に知っている相手からの依頼、要請、命令、使命、運命などにしたがって事件に関わる(ロイスとして依頼者を提示する)ことになる。
中盤を支える
オープニングが決まり、ヒロインと敵のイメージがある。あとは、オープニングからクライマックスのあいだ、つまりミドルフェイズを作ることとなる。ミドルフェイズではおおよそ7~8シーンほどを使って、次の事項を実現することになる。
進行イベント
クライマックスにPCを誘導するためのシーン。PCたちがオープニングで与えられた動機を補強し、シナリオの目的に沿って物語を進行させる(しばしば迷走するが、それも楽しみの一つではある)。進行イベント中には、次の二種類のイベントを行なう必要がある。
PC同士の出会い
PC同士が出会って協力体制を取るためのシーン。1~3シーンぐらいが適当。
情報収集
セッションで発生している事件についての情報を集めるためのシーン。1~2シーンが適当である。
トリガーイベント
主にクライマックスフェイズの直前などに(残っていれば)シナリオの謎や敵の正体などが明らかになるイベントである。状況を整理するために使用される。クライマックスへ向けての引き金(トリガー)となるイベントなので、"トリガーイベント"と呼称される。
クライマックスに特殊な仕掛けがある場合は、そのための情報が開示されるのもこのトリガーイベントである。
クライマックス
どのようなクライマックスになるかはこれまでのシナリオ製作の過程で決定しているはずだ。エネミーデータやシナリオ専用のルールなど使用するデータの準備をすること。
エンディング
クライマックスフェイズが終われば、エンディングフェイズとなる。エンディングの内容は、セッションの雰囲気やシナリオの展開などによっても変わるため、事前にきっちりと決めなくてもよい。大まかなイメージを作っておくとよいだろう。
注意点
最後にちょっとした注意と提言を書いておきたい。シナリオの作成とセッションの運営の参考にして欲しい。シナリオは不可侵なものではない。セッションが完全にシナリオに沿って進行することなどまずありえない。それで問題はないのだ。それは普通のことなのである。
RPGは変化していく遊びだ。そのシナリオはGMであるあなたとプレイヤーによって変化し、あなたたちだけの物語を形作っていくだろう。GMは常にその場その場でNPCのセリフやシーンの、あるいはキャラクターの演出やプレイヤーへの対応を行なっていかなくてはならない。
だから、GMはシナリオやシーンの記述に過度にこだわることなく、シナリオの流れに注意しよう。PCたちが、救うべき相手や守るべきものを理解していれば、シナリオは問題なく進んでいく。予定と違ってもうろたえる必要はないのだ。
作成済みシナリオの勧め
このように長く解説してきたが、もしあなたがGMに慣れていない、シナリオ作成に慣れていないという場合、まずはルールブックに掲載されているシナリオをプレイしてみて欲しい。
解説されていることが、実際のプレイに即して理解できるだろう。是非試してみて欲しい。