PC作成のガイド
PC作成の難しさ
『DX3rd』に限らず、TRPGのキャラクター作成は難しい。TRPGのプレイ経験が豊富な人でも、PCを作るときには何らかの迷いが発生する。これは、TRPGの自由度に由来する。TRPGはどんなPCで遊んでもよい、すばらしいゲームだ。PCが男性でも女性でも、子供でも大人でも老人でも構わない。ルールの範ちゅうを超える作り方をしなければ、基本的にはどのようなPCを使ってもよいのだ。 だが、それゆえにPCを作るのは難しい。何でもできるということは、裏を返せば指針がないということでもある。なんのイメージもない状態でひとりのキャラクターを作るのは、慣れた人間でもそれなりの労力がかかる。
また、好き放題に作りすぎて周りのプレイヤーやGMに迷惑がかかるPCも避けたい。TRPGは参加者全員で楽しむゲームである。周囲の人たちへの配慮を忘れてはならない。
ここではPC作成のきっかけになる要素と、問題になりそうなケースを解説する。なお、本ページでいうPC作成、とは『基礎ルールブック1』や『基礎ルールブック2』で定義されているキャラクター作成を行ない、終了させることである。
イメージをふくらませよう
PCを作成する上で、もっとも重要になるのはイメージである。どんな性格なのか。どんな能力なのか。どんな外見なのか。どんな口調なのか。ほんの少しのイメージで構わない。そのイメージができれば、それをふくらませることでPCは完成する。まずは自分のやりたいキャラクターをイメージしていただきたい。
なお『DX3rd』にはPC作成のイメージソースとしてトレーラー、ハンドアウトなどを用意している。それらを読んでPCのイメージをふくらませるのもよいだろう。 サンプルキャラクターの利用
イメージが浮かびにくい場合、サンプルキャラクターを利用するのもひとつの方法だ。サンプルキャラクターにはイラスト、セリフ、解説、そしてデータと、あなたのイメージをふくらませる素材がたくさん詰め込まれている。その中で「面白い」、「かっこよい」と思ったものを選択し、ライフパスを決定していくことでPCを煮詰めていくのだ。
無論のこと、アレンジを加えても構わない。イラストが男性だからといって、必ずPCを男性キャラクターにしなければならないわけではない。データだけ同じにして、まったく別のキャラクターとして利用するのも有りだろう。
イメージから作るPC
では、思いついたイメージからどうやってPCを作成するのかを解説しよう。以下の説明は基本的にコンストラクション、またはフルスクラッチでPCを作成することを想定している。また、状況や担当するGMによってキャラクター作成の手順が異なる場合がある。注意いただきたい。さてあなたはPCのどこをイメージしただろうか。次の項目に当てはめていただきたい。
・PCの立場
・PCのデータ
・PCの設定/性格
あなたがイメージした項目によって、どのようにPCを作成するかが若干変わる。それぞれについて解説していこう。
PCの立場
自分のPCの立場を最初にイメージした人は、まずワークスとカヴァーの作成から行なうとよい。ワークス表を開き、ワークスとカヴァーを選択するのだ。特にここではカヴァーを先に想像していただきたい。そのキャラクターが一体どんな立場なのか、『DX3rd』においてそれをもっとも端的に表わすパラメーターがカヴァーである。例えば学生のキャラクターをやろうと思えばカヴァーは高校生、大学生あたりになるし、探偵をやろうと思えばカヴァーは探偵で決定する。この時点でPCの社会的立場はだいたい決定するのだ。 その後、ワークスを選ぶことによってイメージを深めるとよいだろう。ワークスが格闘家、カヴァーが高校生で「ボクシングに打ち込んでいる高校生」というキャラクターも表現できるだろうし、ワークスがエグゼクティブ、カヴァーが探偵で「大規模な事務所を経営している探偵」というキャラクターもできる。これもまた、ワークス表を見て当てはめていただきたい。
UGNチルドレンやレネゲイドビーイングなどは、ワークスの中でも特殊なワークスであり、それを選択した時点でいくばくかの設定がPCに付加される。これらは最初からやりたいと思っているのでなければ選択肢から外しておいた方が無難である。無論、進んでやりたい場合、躊躇する理由は無い。
PCのデータ
こんなデータがやりたい、こんな風に戦いたいというイメージが浮かんできた人は、ブリード、シンドロームの選択から行なうとよいだろう。『ルール1』P%から掲載されているシンドロームの解説ページを見て、イメージに合うシンドロームを選択するとよい。「その際、シンドロームはひとつだけを選択してみよう。『DX3rd』はひとりのキャラクターが最大で三つのシンドロームを保持できる。だが、最初から複数のシンドロームを選択するのは大変だ。よって、まずメインで使用するシンドロームを決めてから、それに合わせる形で他のシンドロームを選ぶのだ。 この時、ひとつでも十分だと感じればピュアブリードにすればよい。
戦闘タイプ
シンドロームを決めたら、そのPCがどうやって戦闘に参加するのかを考えてみよう。
『DX3rd』は現代を舞台としたいわゆる異能力ものと呼ばれるジャンルのTRPGである。PCであるオーヴァードが活躍する場面として、戦闘は欠かせない。『DX3rd』では、戦闘への参加方法は以下のように分けられる。 〈白兵〉による攻撃役
〈射撃〉による攻撃役
〈RC〉による攻撃役
支援、回復役
見ていただければわかるとおり、攻撃役が三種類と支援役という区分になっている。その他、これらに当てはまらないキャラクターもいるのだが、ここでは割愛させていただく。さて、あなたの想像するPCはこの中のどれに当てはまるだろうか?例えば日本刀で攻撃するPCを考えていたのであれば、0になるだろう。炎を生み出して敵を飲み込むPCならば3となる。
当てはめたのなら、それを実行できるエフェクトを取得していこう。その際注意してもらいたいのは、エフェクトの技能欄だ。
ならば〈白兵〉、るならば〈射撃〉というように、先ほど挙げた区分と使う技能はほぼ一致している。使用する技能と合致したエフェクトを見ていけば、エフェクト選択の幅も狭5まり、取得しやすくなるだろう。
の支援役を選択した場合は、技能だけでは選択肢を狭められない。エフェクトの中身まで見て検討していかなければならないからだ。だが、ひとつの指針として「タイミング:メジャーアクション」かつ「難易度:自動成功」のエフェクトを見ていけば比較的他者の支援や回復を行なうエフェクトが多いはずだ。このようにイメージから役目を決めることで、PCのデータを大枠から決めてゆくのだ。
PCの設定/性格
自分のPCの設定や性格からイメージした人は、すべてのデータを保留にしておいてライフパスやパーソナルデータから決定するとよいだろう。
そのPCの生い立ちや、今までにあった事件、レネゲイドへの覚醒状況などを決めることでさらに設定や性格をふくらませ、キャラクターとして作成していくのだ。「ライフパスは経歴表など、一部ワークスやカヴァーが決定していないと選択しづらい部分もあるが、そういった部分は保留しておいて構わない。
設定がふくらんでいけば、そこからワークスやカヴァー、ふさわしいシンドロームなどを想像できるだろう。
さらに大きくイメージを
ひとつのイメージをPCのデータへと落とし込んだなら、今度はそれを下地にして他のイメージを広げよう。
例えばワークス、カヴァーを設定して「頭のいい高校生」というPCが決まったら、そのPCが一体どんな経歴なのか、どんな能力を持っているかをイメージしていくのだ。最初の何も無い状態よりは、考える素材がそろっているので、ずっと早く決まるはずだ。ライフパスなどは表になっていることもあり、とりあえずダイスで振ってみてから考えてもよい。このように項目を埋めていけば、最終的にはあなただけのPCができあがりとなる。
他人と協力しよう
右のようにPC作成のコツを解説してきたが、最後にもうひとつだけアドバイスを。-あなたがPCを作るとき、積極的に他の参加者へ相談するとよい。プレイヤーならばお互いに情報交換をすることで、よりイメージを拡大できるし、GMならばよりシナリオにあった形のキャラクターに誘導してくれるだろう。
例えばあなたが先にデータの方向性を提示しておけば、他のプレイヤーが弱い部分を補強してくれるかもしれない。逆に他のPCの設定を確認することで、あなたがPCの設定を深められるかもしれない。
多人数で物事を考えるということは、それだけアイデアが出てくるということだ。PC作成においてもその方法は有効なのだ。
インターネットの活用
プレイヤーやGM、それからセッションの状況にもよるが、こういった相談はインターネット上で行なうと便利である。掲示板にPCの設定などを書き込んでおけば、他の人がいつでも参照できるからだ。
コンベンションなど、その場で集まって遊ぶスタイルには向かないが、是非一度試してみて欲しい。
PC作成の際の注意点
では最後に、PC作成で発生する問題点を挙げておこう。本章の最初に「TRPGではどのようなPCで遊んでもよい」と書いたが、厳密に言えば正確ではない。PCとしてふさわしくないキャラクターも存在するのだ。それは「他の参加者に迷惑をかけるキャラクター」である。例えば、相手の承諾もなしに隣のPCを心底憎んでいるキャラクターを作り、ゲームに参加したとしよう。もしあなたがPCのロールプレイとして悪口雑言を、隣のPC―つまりプレイヤーに吐いたとしたらどうだろうか?無論、そのプレイヤーは不快な気分になるだ
ろう。もしかしたら、そのプレイヤーとの人間関係が壊れてしまうかもしれない。こういったことの無いように、PCを作成する際から注意したい。
気をつけるべきなのはプレイヤーだけではない。GMにも配慮をするべきだ。シナリオが進行しなくなるようなPCは、GMの迷惑になるばかりではなく、その日のセッションを壊してしまいかねない。
もちろん、プレイヤーはGMの用意したシナリオを知ることはできない。よって、配慮するべきなのはGMの提示したハンドアウトとトレーラーとなる。これらを無理なく組み込めるPCを用意するのがよいだろう。
もちろん、この際にも先ほど紹介した「相談する」手法は有効である。「こういったキャラクターをやりたい」、「こういう設定でよいだろうか」と先に聞いておけば、GMはシナリオに合わせて答えてくれる。もしかしたら、シナリオの方を調整してくれるかもしれない。
TRPGは全員が参加者であり、全員が楽しむために行なわれる遊びだ。あなたも、他の参加者も楽しむために十分なすりあわせをしていただきたい。